一般社団法人 日本医療情報学会

[3-I-1-06] 画像認識を用いた歯科治療部位の推定システムの構築

*西本 真太朗1,4、岡 真太郎2、野崎 一徳2,3、北村 温美4、中島 和江4、林 美加子1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室), 2. 大阪大学歯学部附属病院オーラルデータサイエンス共同研究部門, 3. 大阪大学歯学部附属病院医療情報室, 4. 大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部)

Dentistry, Medical safety, Identification

背景
歯科領域における重大な医療安全上の課題の一つに治療部位誤認が挙げられる。処置部位の伝達、認識、同定を効率的・効果的に支援する仕組みとして、我々は、処置予定の部位と電子カルテ内の処置部位に関する情報とが自動照合されるシステムの開発を目指している。そのための基礎技術として、画像認識技術を用いて治療用器具の位置を検出し、リアルタイムで治療部位を推定するシステムを構築したので報告する。

方法
一般的な歯科治療で使用頻度が高い器具である、エアタービン(TwinPower Turbine、モリタ、以下:タービン)とバキュームチップを検出対象とした。模擬患者の歯にタービンとバキュームチップを位置づけて撮影した、236 枚の画像とアノテーションデータを作成し、YOLOv4 (Alexey Bochkovskiyら、2020)の学習を行った。158 枚を学習用に、78 枚を検証用に割り振り、各種パラメーターは初期値のまま、40000 エポック学習を行った。検出精度の評価として、学習用とは異なる118 枚の画像に対して画像認識を行い、IoU (Intersection over Union)が50 % (IoU50)と75 % (IoU75)の場合の各器具の AP (Average Precision)とmAP (mean Average Precision)を算出した。

結果
タービンのAP、バキュームチップのAP、およびmAP はそれぞれ、IoU50 の と き 、 88.82 % 、 96.61 % 、 92.71 % と な り 、 IoU75 の と き 、31.27 %、60.72 %、46.00 %となった。

考察
器具の検出が高確率で可能であり、また一般的に治療用器具が治療対象歯の近くで操作されることから、歯科治療中の画像に基づいて、治療部位の推定が可能であることが示唆された。今後の課題として、タービンとバキュームチップ以外の歯科用器具や、治療対象歯を同定する必要がある。