Japan Association for Medical Informatics

[3-I-3-03] 単純X線画像を対象とした骨粗鬆症性椎体骨折の画像診断手法の検討

*Kiwa Tanaka1, Takashi Yoshino1, Masatoshi Teraguchi2 (1. 和歌山大学, 2. 和歌山県立医科大学 整形外科)

Image Processing, Vertebral Fracture, Transfer Learning

1.はじめに
近年,AIを活用した医療支援に関する研究が進められている.本研究では骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に着目した.OVFは骨粗鬆症に起因して生じる骨折で,偽関節や遅発性神経障害を引き起こす恐れがあり,死亡リスクの高い疾患であるため早期発見による治療介入が必要である.先行研究では,CTあるいはMRI画像を対象とした畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を活用した画像診断手法の提案が一般的であるが,単純X線画像を対象としたCNNモデル構築は少ない.本研究では,初期の検査時に利用される単純X線画像を対象とし,診断時の見逃し防止支援を目的として,転移学習を用いたOVFの画像分類手法を検討する.
2.方法
本研究では単純X線画像により撮影された108症例(OVF症例89例,OVFが見られなかった正常な症例19例)を利用した.胸腰椎X線画像から一つの椎骨をトリミングした画像を入力値とし,入力画像が骨折椎体であるか正常椎体であるかの判定を行う画像分類モデルを構築する.画像分類モデルの構築には胸腰椎X線画像からトリミングした画像を用い,骨折椎体・非骨折椎体をそれぞれ145枚利用する.椎体骨折の判定を行うモデルとして,ImageNetで事前学習済みのVGG16を使用して転移学習を行った.
3.結果
層化K分割交差検証を用いて評価を行った結果,OVFの画像分類モデルにおける各評価指標の平均値は,正確度は0.74,感度は0.76,適合率は0.76,F値は0.74であった.従来研究における医師のX線画像のみの診断の正確度は0.7程度であり,人と同等程度の結果が得られた.
4.おわりに
単純X線画像を用いたOVFの画像分類モデル構築の概要について述べた.最終原稿では,画像分類モデルの構築時に利用したデータ拡張手法や,利用したニューラルネットワークの精度について考察を行う.