Japan Association for Medical Informatics

[3-P-2-04] スマートフォンを用いたVR一人称体験による精神看護学教材の評価

*Akiko Omura1,2, Miki Takami2, Kyoko Ishigaki2 (1.鳥取大学医学部保健学科, 2.兵庫県立大学大学院)

Virtual reality, first-person perspective, psychiatric nursing

【背景】新型感染症の流行を背景に、わが国の教育手法はDX化が進行している。VR等がその代表だが、費用負担や専門技術の不足から、十分な普及とは言い難い。一方で、精神科では患者の状況や感情を想起理解してケアを行うため、臨床での患者対面が困難な際、患者理解が十分とは言い難い状況もあった。また、これまでも精神科保護室の特殊な環境が、学生に不安や恐怖心を生じさせ、不十分な患者理解に至るケースがあった。 【目的】保護室体験VR教材を作成し、学生が保護室入室中の患者を疑似的に一人称体験することで、患者の状況や感情を想起し、より効果的なケアが検討できると考えた。またその教材が、特殊機材や専門技術を用いず、短時間で安価、簡便に作成可能ならば、各教育機関の経済・時間・技術的負担も少なく、新たな教材開発の拡大が期待されると考えた。 【方法】レンタル機材の全天球型カメラで精神科保護室内を10分程度で撮影し、無料アプリからスマートフォンで再生するVR教材を作成し、学生26名に保護室患者体験演習を実施した。学内設営した模擬体験室での体験群とVR体験群の2群で、主観的理解度や教材評価とストレス測定を検定やテキストマイニングを用いて比較検討した。 【結果】主観的理解度では、模擬体験室群で「モニター観察目的」「訪室観察目的」で体験前後の理解度に差を認めなかった。また教材評価では、両群に「不安」「孤独」、「患者」「気持ち」「考える」の各共起を検出した。ストレス測定「SRS-18」は「普通」であった。 【考察】両教材共に、学生に情動反応をもたらし「患者感情」の思考が導かれた。一方で、設備的・倫理的限界がある模擬体験室に比し、VRはその限界を超え、限りなく現実に近い患者の状況と感情を学生に想起させる可能性がある。また、その教材はストレス負荷に関する一つの安全性を保つ教材で、短時間で安価に簡便な作成手法である。