一般社団法人 日本医療情報学会

[3-P-3-02] 生活習慣改善を目的としたベイジアンネットワークによる問診票と健康診断結果の分析

*井口 拓己1、吉野 孝1、高木 伴幸2、小池 廣昭3 (1.和歌山大学、2.和歌山県医師会成人病センター、3.小池クリニック)

Bayesian network, lifestyle diseases, medical questionnaire, medical checkup

1.はじめに
生活習慣病は,食事や運動,睡眠,酒,たばこ,ストレスなど,日々の生活習慣が深く関与し発症する病気の総称であり,日本人の死因の上位を占める病気も含まれる.生活習慣が大きく関係する病気であるため,個人の生活習慣により,発病を防ぐことや改善が可能である.先行研究では,日々の生活習慣が記載された問診票や健康診断結果などのデータから,ベイジアンネットワークを用いて,何かひとつの病気に着目したモデルの作成が一般的である.しかし,本研究では,生活習慣病に含まれる複数の病気に対して,ベイジアンネットワークを用いて,生活習慣の改善を目的とした分析を行う.
2.方法
本研究では,問診票と健康診断結果を,ベイジアンネットワークを用いて分析を行う.生活習慣病に密着した生活習慣をデータとして取得するために,問診票形式で,食事や運動,睡眠の質,飲酒頻度や量,喫煙の有無,ストレス度合いなどを回答してもらう.また,健康診断結果には,身長や体重などに加え,血液検査によって判断される高血圧症や脂質異常症などの判定が含まれる.ベイジアンネットワークのモデルは医学的知見に基づいて作成する.
3.結果
モデルは,評価基準のAIC(赤池情報量基準)で13,000であり,ML(最大対数尤度)で4,300である.また,「ほぼ毎日飲酒する」「1日平均歩数が8,000歩未満」「睡眠が浅い」「BMIが肥満」というエビデンスを与えると,事後確率は事前確率と比較して,脂質異常症が30ポイント上昇,高血圧症が19ポイント上昇,糖尿病が26ポイント上昇した.
4.考察
医学的知見に基づいたモデル用い,比較的高いスコアのモデル構築が可能であった.また,明らかに不健康であるエビデンスを与えると,生活習慣病である確率が上昇した.最終原稿では,その他のエビデンスを与えた際の事後確率の変動や,テストデータによるモデルの統計的な評価を行う.