一般社団法人 日本医療情報学会

[3-P-4-05] 地域中核病院と診療所等との情報共有の現状-提供する情報の患者への説明に焦点をあてて-

*新實 夕香理1、太田 勝正2、曽根 千賀子3、大竹 恵理子4 (1.名古屋女子大学、2.東都大学、3.長野県看護大学、4.国立看護大学校)

Information privacy, Informed-consent, Regional medical cooperation

【目的】切れ目のない質の高い医療を提供するための情報連携においては、患者にとって知られたくない情報までもが共有される可能性がある。本研究の目的は、地域医療連携において、患者の個人情報の何が、誰と共有されるのかについて、情報プライバシーの視点から患者にどう説明されているのかを明らかにすることである。
【方法】地域医療連携に携わる地域中核病院の医療従事者を対象に、どのような情報を診療所等に提供し、その際患者にどう説明しているのか、地域医療連携ネットワークへの登録では、どの人が中心となって患者に説明し、同意を得ているのか聴取した。逐語録の作成後、質問毎の語りからコードを作り、類似性に着目し整理した。調査期間は2021年11月から2022年6月で、所属大学の倫理審査委員会の承認を得た。
【結果・考察】参加者は5病院から看護師11名、MSW12名である。平均年齢は42.1歳、地域連携担当は平均7.7年であり、20名が退院支援業務に従事していた。退院支援等のための対象施設への患者情報の提供では、診療や生活状況に関する詳細な情報が伝えられているにもかかわらず、提供に際しての患者からの同意は簡潔な説明による口頭同意が大半であった。説明の際に、患者から資料に何が記載されているか問われた経験はなかった。参加者は、患者に情報の共有範囲に関する要望を確認していないが、例えば暴言・暴力、支払い能力、問題行動は、本人のプライバシーにかかわることだとし、書面には記録せず先方に電話で伝えていた。地域連携ネットワークへの登録では、患者への説明者は施設で異なり、連携先での情報共有の範囲、閲覧者が誰かを知らない者も一部いた。転院等に際して、患者には具体的な情報提供項目や内容が知らされておらず、自分自身の情報の共有についての意思表示はそもそも難しい現状が示唆された。本研究はJSPS科研費20K10618の助成を得た。