[4-A-1-05] 添付文書の電子化への期待 - リアルワールドデータの観点から
real-world data, GTIN, standard drug code, digitization of package inserts
近年、リアルワールドデータ(Real World Data: RWD)を用いたリアルワールドエビデンスの創出が各方面で議論され、国の内外で様々な取り組みがなされている。ここでいうRWDとは、様々なソースから日々収集される患者の状態や診療の提供に関するデータである。多様なRWDの活用目的において、薬剤に関する情報は要であるが、現在、医療現場において医薬品に関する情報の標準化は進んでおらず、施設横断的に収集されるRWDの活用において大きな妨げとなっている。医薬品には多くのコードが存在し、医療施設内では目的別、部門・業務ごとにマスターが存在し、施設固有のローカルコード、ローカルルールが存在する。 薬機法の改正により、医療用医薬品の添付文書の電子化が開始され、GTIN(Global Trade Item Number、GS1標準の商品識別コードの総称)と添付文書情報が紐づき、製薬企業によるGTINの登録が進むこととなった。添付文書の電子化とこれに関わる一連の施策は、各施設が苦労して標準化に対応するのではなく、各種コードのユースケースと流通プロセスを整理した統合的管理の仕組みへ、ナショナルマスターへ、標準的医薬品コードが円滑に流通する仕組みへとつながること、このことがリアルワールドデータの活用基盤の一端をなすことが期待される。 添付文書の電子化が有する潜在的な力には、部署・組織ごと、領域ごと、業界ごと等、ことごとく縦割りの社会において、それぞれの目的で進んできた取組みをつないでいく橋渡しが、そして医療者と医療消費者をつなぐ橋渡しの役割が期待される。これは、いま各国に広がるデジタルヘルス、すなわちデジタルテクノロジーをもとに根本的に新しい機能を、組織で、業界で、政策で、人々の社会生活の中でも生み出していくという社会全体としての仕組みへの期待である。