一般社団法人 日本医療情報学会

[4-A-3-01] 電子処方箋から始まる医療DX

*伊藤 建1 (1. 厚生労働省大臣官房企画官(医薬・生活衛生局併任))

日本の中長期的(2040年頃)な人口動態を展望すると、高齢者の人口の伸びは落ち着き、現役世代(担い手)が急減すると見られており、「総就業者数の増加」とともに、「より少ない人手でも回る医療・福祉の現場を実現」することが必要である。このため、国民誰もが、より長く、元気に活躍できるような社会を構築していくためには、健康寿命の延伸や、医療・福祉サービスの改革による生産性の向上に取り組んで行く必要がある。加えて、持続可能な社会保障制度としていくためには医療費の抑制も重要な課題である。
このような背景の下、厚生労働省において、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。とりわけ、電子処方箋システムについては、来年(2023年)1月の運用開始まで残り数ヶ月余りと迫っている。電子処方箋は、オンライン資格確認等システムのネットワークを活用し、現在紙で行われている処方箋データのやりとりをする仕組みである。これは、医療機関や薬局、患者それぞれにメリットがあると考えている。直近の処方や調剤履歴について、マイナポータルや電子版お薬手帳アプリ等と連動させることで、患者自身が確認出来るようになるとともに、医療機関や薬局においても、これまで患者の記憶に頼っていた薬の情報が「見える化」されることで、質の高い医療サービスの提供が可能となる。加えて、重複投薬や併用禁忌の自動チェックを処方箋発行と調剤時の二段階で行うことにより、形式的な疑義照会の件数減少や医療費の更なる抑制にも資すると考えている。更に、電子処方箋の導入により、非対面型の医療サービスの普及拡大に資すると考えている。
10月末より全国4地域で電子処方箋の先行実施が開始した。ここで得られた課題や好事例を踏まえて、来年1月の運用開始に万全を期していくことが重要である。