Japan Association for Medical Informatics

[4-C-1-01] アラート疲労 医療安全管理者の立場から

*Kyota Nakamura1,2, Takeru Abe1, Hideki Katsumata1, Yumi Nagano1, Yuichi Sato3, Teppei Nishii1,3, Hitoshi Sato1,2 (1. Yokohama City University Medical Center, 2. Osaka University Hospital, 3. Yokohama City University Hospital)

alert fatigue, electronic health record, patient safety

人間の身体能力・認知能力には限界があり、どんなに注意をしても必ずエラーを起こす。医療安全の領域では、エラーは避けられないという事実を認識し、個々の状況で人間が発揮できる能力と反応性の限界を理解し、エラーの可能性が少なくなるように環境設定することが必要であるという考えのもと、ハードウェアやソフトウェア、作業環境、対人関係など医療システムを多面的に捉えて、安全設計をするアプローチが強調されている。従来からの安全のアプローチでは、特定の有害事象やインシデントに注目し、スイスチーズモデルなどの線形モデルを使って説明のうえで、プロセスを複数のパーツに分解して、それぞれのパーツに個別に対策としてのパッチをあて、それらの足し算で安全対策とする。このとき、机上の対策案として考えやすいのが、ハードウェアやソフトウェアでの安全対策であり、生体情報モニターや電子カルテなどへの期待は大きく、対策が積みあがることで実際に多くのエラーを防止していると考えられる。
アラート疲労とは、医療従事者のアラートに対する反応性が鈍化し、アラートの無視や適切な対応の欠如が生じることを説明するもので、大量のアラートや意義の少ないアラートへの暴露が主な背景と考えられている。日々のインシデントを集計すると、多くの施設で薬剤関連の報告が最も多く、オーダリングから投薬までの一連のプロセスの一つのパーツとして、またアレルギーなど関連情報との統合機能として、電子カルテに対策を依存することは多い。安全対策として電子カルテ上に様々なタイプのアラートが積みあがっている一方で、無視されたり不適切な対応がとられるケースも経験し、新たなリスクであるアラート疲労が常態化していることが伺われるが、実態の把握はほとんどされていない。
電子カルテのアラート機能が医療安全に貢献していることに疑いの余地はないが、さらなる安全の向上にむけて、アラートのあるべき姿を検討する必要がある。