一般社団法人 日本医療情報学会

[4-C-1-05] 医師の薬剤アラートに関する院内意識調査と中止介入前後の評価

*滝沢 牧子1,2、中山 典幸1,2,3、斎藤 勇一郎4、小松 康宏1,2 (1. 群馬大学大学院医学系研究科 医療の質・安全学、2. 群馬大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部、3. 群馬大学医学部附属病院 薬剤部、4. 群馬大学医学部附属病院 システム統合センター)

Medication Alert, Alert Fatigue, Physician Survey, Alert Governance

薬剤に関連する医療事故の防止は医療安全上の重要な課題であり、医療情報システムへの期待は大きい。処方行為は医師のみが実施する医療上の専権事項であり、必然的に処方時のアラートの受信者は医師のみとなる。処方時に、アラートが出ていたにも関わらず、見逃してしまい、誤処方される事例は全国で繰り返し発生していることが報告されている。その要因の一つとして、アラート過剰による認知的な過負荷や精度の低いアラートによる脱感作によって、アラート疲労が発生していることが考えられる。医療安全上重要な処方時アラート設定がされていても、人間の認知の特性や限界を考慮して、適切な質および量にコントロールされていなければ最終的に医師の処方行動を変える機能を発揮できない場合がある。
 アラートの受信者である医師が、処方時アラートの有効性や必要性、全体の数、アラート疲労、個別のアラート内容についてどのように認識しているか把握するため、アラートに関する意識調査を行った。2021年2月に当院に勤務する医師を対象として、Googleフォームを用いて調査を行い、32診療科、154名の医師・歯科医師から回答を得た。医師の76%はアラートが役に立つと感じている一方、81%はアラート数が多い、68%はアラートに対する注意力が低下していると回答した。具体的な処方時アラートのうち、多くの医師が不要と感じており、中止しても医療安全上のリスクが低いと考えられたアラート2種類を中止する介入を行い、介入前後の処方件数の変化を定量的に評価した。また、医師からは定期的な見直しを希望する意見もあり、より精度が高く有効なアラート設定に向け、今後も継続的な取り組みが必要と考えらえた。