一般社団法人 日本医療情報学会

[4-C-1-06] 処方時アラートの院内管理体制に関する全国実態調査

*中山 典幸1,2、滝沢 牧子1,2、大石 裕子2、田中 和美1,2、小松 康宏1,2 (1. 群馬大学大学院医学系研究科 医療の質・安全学、2. 群馬大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部)

Medication alert, Alert fatigue, Alert management, Clinical governance

適切な処方時アラートは、処方の誤りを是正し得ることから医療安全上有用とされている。一方、特異度が低いアラートが多数発出されることで、個々のアラートへの注意が低下する「アラート疲労」が医療安全上の新たな課題となっている。2019年から2021年に日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業で収集された事例のうち、「薬剤」「アラート」で検出された66例を分析すると、12例がアラートに気づかず誤って処方した事例であった。また、海外では、アラートの過剰負荷によるアラート疲労が要因となり、アラート突破率が高値となっていることが複数報告されている。必要なアラートを有効に機能させつつ、アラート疲労を抑制することは、今後の医薬品安全使用における重要な課題である。しかし、わが国では、アラート管理に関する行政や学会からの公的指針、全国的な調査報告等はなく、各施設に任せられているのが現状である。そこで、国内のアラート管理の実態と課題を明らかにするため、処方時アラート管理に関する全国調査を実施した。

1,055の医療機関へ質問票を送付し、259施設より回答を得た(回答率25%)。その結果、処方時アラート設定を全種類把握できていない施設は110施設(43%)あった。また、アラート発出数およびアラート突破率はそれぞれ221施設(86%)および239施設(93%)で測定できておらず、多くの施設でアラート発出状況を把握できていなかった。病院全体でアラートを制御する仕組みとして、アラートの新規追加時の病院方針・ルールを定めている施設は42施設(16%)と少なかった。

以上より、アラート全体を定量的に評価したり、制御する仕組みを有する施設は限られているという国内の実態が明らかとなった。今後、各施設がアラート管理の方針を作り、電子カルテ側でアラートの発出状況を評価できるように整備することが必要と考えられる。