一般社団法人 日本医療情報学会

[4-C-2-04] わが国の公的統計へのICD-11適用の影響に関する一考察:ICD-11準拠の疾病分類構築の試行と影響分析

*小川 俊夫1、滝澤 雅美2、今井 健3、小松 雅代4、向野 雅彦5、今村 知明6 (1. 摂南大学、2. 国際医療福祉大学、3. 東京大学、4. 大阪大学、5. 北海道大学、6. 奈良県立医科大学)

ICD-11, ICD-10, patient survey, disease classification for Japan

【背景と目的】わが国の公的統計に用いられている現行の死因分類や疾病分類は、ICD-10準拠で構築されているが、わが国へのICD-11適用に伴い、これらの分類はICD-11準拠に変更する必要がある。本研究は、罹患統計の疾病分類について、現行のICD-10準拠からICD-11準拠の分類への改訂を試行し、新たな分類が罹患統計に与える影響について考察することを目的として実施する。
【方法】WHOにより公開されているICD-10・ICD-11のマッピングテーブルを用いて、ICD-11準拠の新たな疾病分類の構築を試行した。構築した疾病分類を用いて、各分類の集計項目ごとに新旧分類で内容が変更となる項目を明らかにしたほか、令和2年度の患者調査の結果表を用いて、各分類の集計値の変化について推計を実施した。
【結果】本研究で構築を試行した新たな疾病分類はICD-11の構造に基づいているため、例えば脳梗塞が循環器系から神経系疾患に移動するなど、現行分類とは異なる部分があることが明らかになった。また、現行と新たな患者調査を比較すると、ICD-10から11への構造変更に伴い、集計項目の数が増加すると推定されたほか、分類構造の変化に伴い、患者調査の集計値が新旧分類で異なる項目があることが推計された。
【考察】ICD-11国内適用に伴い、ICD-11準拠の新たな分類を用いることで、ICD-10からICD-11への構造変更により各項目の内容が変化し、それによって罹患統計の各集計値が変動することで、わが国の公的統計に影響があることが示唆された。今後、わが国へのICD-11適用が公的統計に与える影響について精査する必要がある。また、公的統計の継続性を維持しつつ、新たな疾病分類のわが国への円滑な導入を図る必要がある。