一般社団法人 日本医療情報学会

[4-D-1-02] 線量管理再考-JJ1017を使った「正当化」の経験-

*青木 陽介1 (1. 大船中央病院)

放射線被ばくの管理は,大きく「正当化」と「最適化」の2つの視点を持って行う。正当化は,被ばくにより得られるメリット・デメリットの比較による判断であり,医療においては医師が行う。最適化は,正当化で明確化された被ばくの目的および被ばくにより得るべきメリットを最大とするために必要な最低線量に抑えることであり,医療においては放射線技師が行う。 最適化は放射線技師の仕事であるから,そのサポートにはRIS(放射線部門情報システム)の情報の活用が考えられる。RISはもともと放射線技師の業務,画像検査のワークフローに従って設計され,そのための機能も充実していることから,最適化に必要な情報の多くはRISから十分に取得できるものと考えられる。 一方,正当化について必要な情報を収集するツールは皆無である施設が多いと考えられる。正当化に必要な情報は,当該患者の過去の検査歴,患者の全身状態,臨床的に確認すべき事項,焦点となっている疾患に関するガイドライン,など多岐にわたり,その判断も単純なものから複雑なものまで様々である。これらの情報を効率的かつ適時に医師に提供する仕組みを備えることは難しい。 ならば,これらの情報のすべてではなく一部だけでも医師に示すことができれば,それだけでも正当化の判断の支援になるのではないかと考え,当該患者の検査歴をもとに「これからオーダーしようとしている検査が,短期間のうちに繰り返されていないかどうかを判定する仕組み」をJJ1017を使って構築した。「繰り返し行われているかどうか」の判定ロジックに工夫の余地があり,今後さらなる検討が必要であるが,このシステムの利用により,8%程度の検査が削減された。 このシステムの開発と運用について共有し,正当化の視点からの線量管理について議論を深めたい。