一般社団法人 日本医療情報学会

[4-D-2-02] HL7 FHIR JP CORE を現場で活用するにあたり

*塩川 康成1 (1. キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

HL7 FHIRの基本コンセプトは8割ルールと言われ、そのリソースにおけるデータ構造の定義も8割程度の完成度となっている。また、8割の完成度に至っていない段階からMaturity Levelにてその完成度を示しつつ、仕様を公開している。現在のRelease 4Bには139のリソースが公開されているが、このうちNormative、すなわち8割の完成度に至ったものは11しか未だ存在しない。逆に言えば残りの128のリソースはその定義が今後変化することを示唆している。
そんな定義内容の緩いFHIRを生んだ米国や、欧州でのFHIRの活用の現状を研究し、日本においても本学会のNeXEHRS研究会 HL7 FHIR 日本実装WGにて、FHIRのリソース利用要件を定義したJP CORE文書を編纂している。これはFHIRの基礎要件上に、極めて共通的な日本要件をProfileとして定義しているもので、医療における必要最低限の情報共有を担保することを目標に整備されている。2022年3月に厚生労働省標準規格として、4つの医療文書FHIR記述仕様が採択された。ここでは医療機関間における診療情報の共有にあたり、必須である情報項目が含まれる既存の文書構成を元に、その情報構造をFHIRリソースの組み合わせで表現する方法を規定している。ただ、実際のリソース内の要件についてはJP COREでの規定に従っている。
実際の医療現場でFHIRを活用した情報共有をさらに進めるには、多様性のある現場のユースケースを考慮し、その上で基礎的情報の相互運用性を担保することが求められる。FHIR 日本実装WGでもJP COREの要件を継承しつつ、大きなユースケース分類における共通的な実装要件を、さらに1レベル上の定義として整備する活動も行っている。医療現場ではこれらの定義を採用し、施設固有の要件についてProfileやExtensionを追加適応することで、施設内部での情報共有に加え、外部との情報共有も可能な仕組みを整備できる。
一方、FHIR研究会では実際の実装事例を研究し、FHIR日本実装WGの要件定義作業へのフィードバックや、実現場での最適なFHIRの利活用を提案している。