Japan Association for Medical Informatics

[4-F-1-06] 地域に導入したPHRによりワクチン接種間違いが減少

*Atsushi Narabayashi1,2, Go Yamada1, Takatoshi Tsuchihashi1,2, Masayoshi Shinjoh2, Hiroaki Miyata3, Takao Takahashi2 (1. 川崎市立川崎病院小児科, 2. 慶應義塾大学医学部小児科学教室, 3. 慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室)

PHR ; Personal Health Record, prevent vaccine error, child

【はじめに】第40回医療情報学連合大会で発表したPHRシステム(本邦初のICカードとGS1コードを利用した複数医療機関での予防接種情報共有の取り組み)を導入し、予防接種過誤を減らす取り組みを行っている。導入後1年半が経過し、登録接種データ、システムで事前に発見した接種不可エラーログ、導入地域での接種過誤発生率が明らかになった。
【目的】地域内に導入した、ワクチンの接種可否を事前にチェックするPHRの臨床効果を検証する。
【方法】川崎市川崎区在住で区内でワクチンを接種する乳児に認証用カードを配布し、母子健康手帳に貼付。32の医療機関を受診した際、端末を用い、接種前にワクチンのGS1バーコードをスキャンすることで、接種可否をシステムでチェックし、チェック結果の確認後にワクチンを接種した。
【結果】2020年9月末から2022年3月までの約18か月間に985名の乳児に認証用カードを配布。システムへの登録接種データは13,460件、エラーログの発生は40件であった。乳児のワクチンの接種過誤発生率は、システム稼働前の6か月間を1とすると、稼働後は6か月ごとに、それぞれ0.525(-47.5%)、0.559(-44.1%)であった。
【考察】認証用カードを配布した乳児の数は、出生した児の約42%であった。システムへの接種データの登録数は全体の接種数の約40%であったが、多くの場合カードを配布してから初回のワクチン接種までに1か月程度空くため、ほとんどの児がシステムを利用したと考えられる。また、エラーログが発生しており、接種過誤を未然に防ぐことができたと考えられるが、実際にシステム導入前後で接種過誤発生率は44~47%減少し、システムを利用した児の割合(約40%)に概ね合致する。これらのことから、地域内に導入した予防接種記録PHRにより、ワクチンの接種過誤を未然に防ぐことができたと考えられる。