一般社団法人 日本医療情報学会

[4-G-1-07] 「新薬創出を加速する人工知能の開発」
特発性肺線維症臨床情報収集と創薬標的探索手法の構築

*伊藤 眞里1、黒田 正孝1、夏目 やよい1、武田 吉人2、武田 理宏3、松村 泰志4、黒橋 禎夫5、荒牧 英治6、北村 英也7、小倉 高志7、足立 淳1、鎌田 英世1、深川 明子1、樋口 千洋1、水口 賢司1,8、熊ノ郷 淳2,9、上田  修功10 (1. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 AI健康・医薬研究センター, 2. 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学, 3. 大阪大学医学部付属病院医療情報部・医療情報学, 4. 独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター, 5. 京都大学大学院 情報学研究科 , 6. 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科, 7. 神奈川県立循環器呼吸器病センター, 8. 大阪大学蛋白質研究所 計算生物学研究室, 9. 大阪大学免疫学フロンティア研究センター, 10. 国立研究開発法人理化学研究所)

Artificial Intelligence, Medical records, Natural language processing, Drug Discovery, Idiopathic Pulmonary Fibrosis

新薬開発において、第2相臨床試験の開発中止率は約70%と高く、その主な理由は患者さんでの効果が認められなかったことにある。その課題を克服するために創薬標的探索の段階から、ヒト、特に患者さんのデータをもとに創薬研究をすすめたいと考えた。また、世界各国において医療分野におけるAI開発が活発になる中、日本の強みは緻密で丁寧な診療であり、この高品質な臨床情報データを活かしたデータベースを構築することは、医療AI、創薬AIの開発に、ひいては新たな診断方法や治療方法の創出に大きく貢献すると考えた。一方、個々の医療機関が電子カルテなどの形で保有している医療データはあくまで診療、治療を目的としたものであり、AIに学習させることを想定したフォーマットになっていない。また、個人情報保護などの観点でデータの集積や活用にも課題がある。さらに、診療データの解析結果を創薬標的探索にむすびつけるためには、分子情報を同時に取得する必要がある。そこで、我々は官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の枠組みに基づき省庁連携プロジェクト「新薬創出を加速する人工知能の開発」において、予後不良の難病である特発性肺線維症(IPF)を対象疾患として、①臨床情報(診療情報及びマルチオミックスデータ)の収集とデータベースの構築、②データを活用する創薬標的の探索、③データや開発したアルゴリズムの活用を活性化するための公開基盤の構築を行った。本演者は、臨床情報収集から情報抽出および構造化、診療情報とオミックスデータを用いてデータ駆動的に創薬標的を探索するシステム構築とこれら一連の成果について報告する。さらに入力誤差を少なくした診療情報収集システムや大阪大学附属病院と連携病院との間をセキュアなネットワークで結び、電子カルテデータを集積する仕組みについても触れる。