一般社団法人 日本医療情報学会

[4-G-2-06] がん臨床統合データベースの活用:胃外科における予後情報の自動取り込み

*髙橋 輝1、熊谷 厚志2、笠原 あや菜1、鈴木 一洋1、小口 正彦1 (1. 公益財団法人がん研究会有明病院 医療情報部, 2. 公益財団法人がん研究会有明病院 胃外科)

Clinical cancer information, Unified integrated database, Prognostic implications, Gastric cancer

当院は2017年から「がん診療に関する臨床情報を統合的に保存・管理するデータベース(以降「統合DB」)」の開発に着手し、外科系:8診療科、内科系:3診療科にて運用中である。
胃外科データベース運用において、遅発性の術後合併症や再発情報の登録・管理方法には大きな課題があった。リアルタイムでの上記データ管理ができておらず、医師やデータマネージャーが定期的にカルテ記載を見返し、統合DBに手入力で反映していたため、反映漏れや記載ミスの可能性を排除できなかった。これらの情報を漏れなく収集し登録する方法として、術後フォロー診察時の電子カルテのテンプレート記載を自動的に統合DBへ反映する仕組みを構築した。テンプレートの項目には、再発の有無、再発診断日、再発形式、術後化療の有無、術後化療の開始日、術後化療の終了日、術後化療を記入する欄がある。これらの項目を医師が外来診察の際に記入すると、毎日の定期処理により、患者IDと手術日をもとに、統合DB内の対象手術情報を更新する。さらに、テンプレートが作成された患者を対象に、術後の定期的な採血データも自動で収集・登録する。 2022年2月から運用を開始し、1か月に平均319件のテンプレートが登録され、テンプレート数1,596件、患者数1,426人(2022年5月末現在)の遅発性の術後合併症や再発情報を自動収集して統合DBに反映している。 上記の機能を統合DBに実装することにより、人的作業の減少による業務効率化を図り、また反映漏れや記載ミスなどのヒューマンエラーを未然に防ぎ、高品質な臨床データの作成を可能にした。他の診療科でも上記の機能を要望する声が多く、今後は全ての診療科へ順次展開する予定である。