[4-H-2-02] 実臨床データに基づいた機械学習による低Na血症治療における血清Na濃度予測
electrolyte disorder, machine learning, prognosis prediction system, clinical decision support, real world data
【背景】重症低Na血症は重篤な中枢神経症状をきたすことから早急な治療を要するが,短時間で過度な血清Na濃度(s-Na)の上昇は浸透圧性脱髄症候群(ODS)の原因となる.適正な速度でs-Naを補正するためには,数時間毎にs-Naを測定しながら輸液を調整する属人的かつ負担の大きい対応が必要であり,s-Naの補正シミュレーションにつながる予測モデルが望まれてきた.【目的】ODSの予防に注目した安全な低Na血症の治療を行うため,治療選択によるs-Naの予測モデルを機械学習により構築する.【方法】2015年4月から2020年3月に名古屋大学医学部附属病院(A)及び日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院(B)の糖尿病・内分泌内科に低Na血症の治療目的で入院し,電子カルテから詳細な水分出納の記録を収集可能であった症例(A : n = 16,B : n = 113)について検討した.血清Na・K・Cl濃度,水分投与量(飲水・輸液),Na・K投与量(輸液),尿量の7つの予測因子を抽出し,6時間後のs-Na(s-Na6h)を応答としてデータセット(A : n = 163,B : n = 547)を作成した.それぞれの施設において,サポートベクター回帰(SVR)モデルで回帰学習を行い,もう一方の施設で検証した.【結果】Aの学習モデルをBで検証したところ,二乗平均平方根誤差(RMSE) = 0.048574,決定係数R2 = 0.95,Bの学習モデルをAで検証すると,RMSE = 0.047049,R2 = 0.94だった.予測値とs-Na6hとの誤差は±0.7 mEq/Lだった.【考察】臨床的に情報を得やすい7つの予測因子を用いたSVRモデルにより,高精度でs-Na6hを予測できた.今後はさらなるモデルの改善や多施設における予測精度の検証を行い,汎化性能が高く,リアルワールドデータでも活用可能な予測モデルの構築を目指している.