Japan Association for Medical Informatics

[4-H-2-07] レセプト情報・健診情報を活用したリアルワールドエビデンス創出に資する医学統計手法の開発:低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤と血栓症に関するTarget Trial Emulation

*Saki Takeshita1, Yuichi Nishioka1,2, Emiri Morita1, Tomoya Myojin1, Shinichiro Kubo1, Tatsuya Noda1, Tomoaki Imamura1 (1. 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座, 2. 奈良県立医科大学附属病院 糖尿病・内分泌内科)

Target Trial Emulation, Administrative Claims Database, Medical Statistics, Exact Matching Algorithm, High-Dimensional Propensity Score

【背景】Target Trial Emulation(TTE)は理想のランダム化比較試験(RCT)に近づけ研究をデザインする手法である。本研究はTTEの考え方を用い、比較可能性を高める手法を開発した。
【方法】2014~2020年度のDeSCデータベースを解析した。過去12か月保険に加入しており、低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤(LEP)/漢方薬の適応症の傷病名が付与され、禁忌に該当しない女性について、組み入れ月の処方からLEP/漢方群を選定した。既存の(a)調整なし(b)傾向スコア(PS)(c)高次元傾向スコア(HDPS)、新規手法である(d)因子の完全一致 (e)完全一致+PS(f)完全一致+HDPSの6つの交絡調整方法を比較した。尚、PSには血栓症のリスク因子36項目のレセプト情報を、HDPSには医薬品・傷病名・診療行為算定情報を、完全一致には年齢、体格指数(BMI)、腹囲、血圧、HbA1c、空腹時/随時血糖、喫煙、過去1年間の医療費/外来受診/入院日数を用いた。LEP群と適応症を持つLEP処方なし群にも同様の解析を行った。
【結果】1,387人がLEP群、3,457人が漢方群であった。漢方群に対するLEP群の血栓症のオッズ比(95%信頼区間)は(a)0.76 (0.59–0.97)、(b)0.94 (0.70–1.24)、(c)0.53 (0.40–0.71)、(d)1.00 (0.53–1.86) 、(e)0.95 (0.50–1.81)、(f)0.90 (0.38–2.14)とオッズ比や信頼区間が異なった。LEP群/処方なし群でも同様の結果が得られた。
【考察】社会基盤としての医療情報活用に資する新たな手法を開発し、LEPと血栓症の関連を解析した。本手法では、両群の共変量の差が分布せず偶然誤差が生じない。さらに、因子の任意の次数の交互作用も制御でき、あらゆる研究に応用可能である。