Japan Association for Medical Informatics

[4-P-1-02] 医療機関におけるオンライン診療の導入・運用状況に関する考察

*Ryo WATANABE1, Daisuke Sato2, Yuji Nishizaki3 (1.神奈川県立保健福祉大学, 2.千葉大学, 3.順天堂大学)

Online Consultation, Telemedicine, Remote Consultation, Health Administration

近年オンライン診療に注目が高まっているが、その普及にあたって、対面診療と比較した医療の質に関する懸念、システム環境整備の必要性、診療報酬上の制約などいくつかの課題が指摘されている。またオンライン診療には新たな設備等の投資が必要な割に診療報酬が相対的に低く、診療効率も上昇するとは限らない。そこで、本研究では、医療機関におけるオンライン診療の導入・運用における経営上の課題を明らかにすることを目的として、医療機関を対象としたアンケート調査を行った。 民間調査会社が保有する医師調査パネルを用いて、全国の診療所を対象としたインターネット調査を行った。調査内容は、医療機関の基本属性、オンライン診療の導入・実施状況や、オンライン診療にかかる費用や採算性とした。  オンライン診療を実施している全国の診療所148件を分析対象とした。専用システム等の利用について尋ねたところ、45.3%が利用していると答えたものの、過半数の医療機関では特別なシステムを利用していなかった。診療報酬算定件数は最大月で平均19.2件、中央値は5件であった。オンライン診療の採算性について尋ねたところ、7割を超える医療機関が「悪い」または「やや悪い」と回答した一方、「やや高い」「高い」と答えた者は10%に満たなかった。 並行して行われた慢性期高血圧患者に対するオンライン診療の臨床研究では、対面診療と比較したオンライン診療の非劣性を示され、費用対効果にも優れている可能性があることが明らかになった。患者や社会の視点からも、オンライン診療の普及は意義が高いと考えられるが、本研究からはオンライン診療が浸透していないことが示唆された。現在のオンライン診療の方法では診療効率が低下する可能性がある点、オンライン診療の実施に必要な設備投資や維持・管理費に対して十分な収益が得られず採算性の低下が生じる点が、その要因として考えられた。