[2-B-4-01] 電子カルテデータの利活用、そしてその未来 ―J-CKD-DBと臨中ネットの利用経験から―
Clinical research, Real World Data, Chronic kidney disease
日本を代表する腎疾患データベース事業であるJ-CKD-DB及び一連の後継事業は、日本腎臓学会主導で開始され、数々の成果を挙げた。一方、臨中ネットは、臨床研究中核病院由来のリアルワールドデータ(RWD)を様々な分野で活用することを念頭におく汎用データベース(DB)構築事業である。これらは研究体制やデータ収集方法において違いがあるものの、ともに電子カルテデータを中心としたRWDである。 電子カルテDBは検体検査結果や用法を含めた薬剤情報を活用できる一方で医療機関内の情報に限られるため、こうした特性を理解して研究テーマを検討する必要がある。また、時間軸を考慮にいれて研究デザインを注意深く検討することや、必要な変数を導出するための薬剤種別定義用として、研究課題に応じた薬剤マスタ作成等が求められる。 次に、学会主導のレジストリであるJ-CKD-DBと汎用DBの構築を目指した臨中ネットという2つの異なる電子カルテDBの利用経験から、これらの関わりについての展望を述べる。前者は腎疾患に関する疫学研究の促進を目的としており、基盤構築当初からリサーチクエスチョンを想定したデータ項目の整備を進めてきた。一方で臨中ネットは汎用なDBであり、臨床研究に必要なデータ項目を検討する際に、具体的な研究テーマを検討する必要があった。研究テーマを設定して実際にデータ収集を行う過程で様々な問題点が明らかになり、研究基盤構築にとって重要なフィードバックとなった。 臨中ネットの取組みは今後、臨床研究中核病院の枠を超えて広がることが期待され、データ品質の向上や標準化という恩恵が間接的に学会主導DBにももたらされる可能性がある。一方、学会主導のDB研究では優れた研究の実例を示してDB研究を先導するだけでなく、異なるプラットフォーム間で探索型研究から検証型研究へと研究内容を深め、広がりを持たせることが期待される。