一般社団法人 日本医療情報学会

[2-B-4-04] 難治性腎障害における情報分析

*木村 友則1 (1. 大阪大学)

Kidney disease, Informatics, Rare and intractable disease

難病は病態が複雑である上に患者数と情報が限られており、解析を進めにくい領域である。経過も長く一人の臨床医が診療を続けられないので、その自然歴も分かりにくい。診断は難しいが、そもそもの診断基準や臨床分類の妥当性自体も常に模索されている。このような難病の自然歴の解明や適切な患者層別化を目指して、難治性腎障害研究班では、腎領域での難病のデータ解析を進めるべく取り組んできた。利用しているデータは難病データベースとレジストリ由来のデータである。我が国においては患者の難病指定時に臨床調査個人票を作成しているが、このデータを難病データベースに登録する事業が進められ、全国の難病患者のデータが登録されている。また研究班では、研究目的で登録した患者コホートデータ(レジストリデータ)も取得している。難病データベースとレジストリデータにはそれぞれ長所があり、相補的解析が期待されている。 我々は各種の横断、縦断的臨床データをニューラルネットワークに学習させ、その特徴をオートエンコーダーによって解析した。これにより、ネフローゼ症候群における自然歴の解明や、全身性エリテマトーデスで高頻度に合併する腎障害における新たな病態の検出等、進めてきた。そもそも難病データには全国調査であることから、一般的な統計解析により、プラクティスパターンやガイドライン遵守率等、難病診療上の重要な情報の調査にも活用している。 難病の複雑な病態解明のためには既存の情報を最大限に活用するべきだが、一方で、これまでの視点とは異なるバイオマーカーの活用も必要である。最近、アミノ酸の光学異性体の内、生体に存在しないとされたD-アミノ酸が、腎臓や感染症領域で鋭敏なバイオマーカーであり、かつ、生理機能を持つことが分かっており、難病病態解明に活用されている。今後、情報分析と新規バイオマーカー研究の融合により、難病の病態解明が進むことを期待している。