一般社団法人 日本医療情報学会

[2-C-4-01] 政府が主導する標準退院時サマリの運用基盤とその実証研究

*中島 直樹1,2、山下 貴範1,2、平松 達雄3 (1. 九州大学病院 メディカル・インフォーメンションセンター、2. 九州大学 データ駆動イノベーション推進本部 健康医療DX推進部門、3. 国際医療福祉大学医療情報部/未来研究支援センター)

HL7 FHIR, Discharge Summary, Digital Transformation, Data Secondary Use

厚生労働省は、2021年11月に健康・医療・介護情報利活用検討会の下に、医療情報ネットワーク基盤に関するワーキンググループを設置し、データヘルス改革に関する工程表に従って、医療情報ネットワーク基盤のあり方や技術的な要件の検討を行った。 その中では、電子カルテ情報共有サービス(仮称)で、診療情報提供書、退院時サマリのHL7 FHIR規格(2022年3月に厚労省標準規格化)の2文書と標準コードが付与された6情報(傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査(救急、生活習慣病)、処方)を医療施設間で共有し、また6情報はオンライン資格確認ネットワーク基盤上で患者・市民あるいはその同意を得た医療施設と共有する方針が定まった。なお2文書には任意のタイミングの6情報を添付でき、全てのタイミングの6情報は随時患者と共有される。保存期間は情報種によって異なる。これらの仕組みは、2022年6月に示された「骨太の方針2022」で、「全国医療情報プラットフォーム」 の一部として位置づけられた。 2022年10月に医療DX推進本部が設置され、体制が強化された。2023年6月には工程表が公開されたが、2023年度に2文書6情報を出力する標準型電子カルテの要件定義を行い、2024年度中に開発に着手、小規模医療施設を中心とする電子カルテ未導入医療機関に対して導入支援を行い、遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指すとしている。 すでに電子カルテを導入している医療施設の退院時サマリ機能への厚労省標準規格実装・HL7 FHIR出力対応や、既存の地域医療ネットワークとの連携など課題は残るが、標準退院時サマリの連携については大きく前進しつつある。我々が2022年に実施した厚労科研によるHL7 FHIRを用いた病院・PHR間の連携に関する実証研究の結果も併せて報告する。