一般社団法人 日本医療情報学会

[2-C-4-05] 地域医療連携における退院時サマリーの役割

*山村 修1 (1. 福井大学医学部 地域医療推進講座)

discharge summary, activities of daily living, advance care planning

退院時サマリーは入院患者の治療内容や経過を要約した文書であり、記録だけでなく、その症例に関与した医療従事者間の情報共有も目的としている。このため、退院時サマリーには多職種で共用できる指標や基準の記載が必要であり、日常生活動作(Activities of Daily Living :ADL)はその代表格と言える。ADLの指標の一つであるFunctional independence measure(FIM)を退院時サマリーに活用している事例は散見される。しかしADL評価はリハビリテーション部門が充実している病院では実施しやすいものの、規模の小さな医療機関では専門スタッフの不足から実施は困難な場合も多く、退院時サマリーの標準化項目に挙げるには課題がある。福井県で活用されている脳卒中地域連携パスのオーバービューでも急性期並びに回復期を担う医療機関まではADL指標を利用するものの、小規模機関の多い維持期の分野では利用されていない。今後は中・大規模医療機関においても就労者減少に伴う省人化が求められることから、平易に求められるADL評価指標の導入が望まれる。 地域医療は病院や診療所、施設だけでなく、調剤薬局や歯科医院、訪問ナースステーション、居宅支援事業所など様々な業種を包含している。近年は電子カルテの普及とともに地域内でのカルテ閲覧システム(地域医療連携ネットワーク)も発達し、前記の様々な業種でカルテ閲覧が可能となっている。各職種が患者把握の中で重視しているのが退院時サマリーであり、閲覧件数も増加している。特に多死社会が深まり、Advance care planning(ACP)が重視される高齢者医療において、入院はACPに必要な情報を収集する貴重な機会である。退院時サマリーには、そう言ったACPのきっかけとなるエピソードの記載も期待される。