[2-E-3-06] 死亡診断書情報の解析による骨粗鬆症死亡の実際数の検討
death certificate, osteoporosis, vital statistics, International classification of disease, fragility fracture
【背景】国内骨粗鬆症罹患者は1200万人、大腿骨近位部骨折発生数は年間17万件とされる。骨粗鬆症は脆弱性骨折を合併すると5年生存率が約20%低下するため、骨粗鬆症に因る死亡者は相当数に上ることが予測される。ところが、人口動態調査(2018年)によると、年間死亡者数約136万人中、骨粗鬆症を原死因とする死亡は190人にとどまる。一方で同調査は、平地での転倒を受傷機転とする(軽微な外力による)外因死を7596人としている。この中に、骨粗鬆症(診断基準:大腿骨近位部もしくは椎体の脆弱性骨折の存在)による死亡例が紛れている懸念がある。【目的】骨粗鬆症脆弱性骨折に起因した死亡数について、死亡診断書データを用いて検討すること。【方法】総務省オンサイト施設で閲覧可能な人口動態調査(2018年)の死亡診断書データ(約136万件)を対象とした。大腿骨近位部もしくは脊椎骨折による死亡例の中で平地での転倒によるもの(=骨粗鬆症の診断基準)に合致する死亡数を調査した。【結果】平地での転倒で生じた大腿骨近位部及び椎体骨折が死因となった例はそれぞれ2737例、939例であった。本来これらは骨粗鬆症に因る死亡(内因死)とされるべきであり、実際の骨粗鬆症を原死因とする例は公表値の20倍程度である可能性が示唆された。【考察】ICDルールでは、骨折が死因とされる事例は、受傷機転から脆弱性骨折であること(=骨粗鬆症の診断基準)が推測されても、診断書に骨粗鬆症と明記されていない限り、不慮の事故死などの外因死として登録される規定となっている。診断書作製時、特に脆弱性骨折例において “骨粗鬆症”の記入漏れを防ぐべく、診療情報管理士と臨床医の再教育が求められる。【結論】実際の骨粗鬆症による死亡数は公表値の約20倍存在する可能性がある。精緻な統計を得るために、該当例の死亡診断書作成時には“骨粗鬆症”と明記する必要がある。