一般社団法人 日本医療情報学会

[2-G-3-03] 電解質異常治療薬処方に関する不適切疑い事例を検出するプログラムの開発と検証

*横田 慎一郎1、永島 里美1、土井 俊祐1,2、三谷 知宏1、福原 正和1、青木 美和3、今井 健3、大江 和彦1,3 (1. 東京大学医学部附属病院, 2. 千葉大学医学部附属病院, 3. 東京大学大学院医学系研究科)

Patient Safety, Prescriptions, Water-Electrolyte Imbalance, Hospital Information Systems, SS-MIX2

背景:血清カリウム値が基準値未満の状態でも高カリウム血症治療薬が処方されてしまう事例がある。院内で実際のインシデント事例から、電子カルテシステム上の登録病名に対応した警告機能も、処方せん監査もすり抜けている可能性があり、別のアプローチによる対策が必要である。 方法:医薬品情報データベースDIR(データインデックス株式会社)により高カリウム血症治療薬の個別医薬品コードを選択し、次に医薬品HOTコードマスターから、対応するHOTコードを選択した。続いて、対象のHOTコードまたは対応する院内用ローカルコードが含まれる処方データをSS-MIX2トランザクションストレージから抽出し、さらに、検体検査結果値をSS-MIX2標準化ストレージから抽出する仕組みとして、Windows 11 Pro上のPython 実行環境において実装した。 結果:設計通りに実装することができた。動作テスト時に本プログラムで発見した1事例について、医療安全対策部門経由で確認したところ、実際に病棟で検討中という事例であった。また過去の実際の誤処方インシデント事例を抽出できることを確認した。 考察:本手法は、プロプライエタリな医薬品情報データベースを使用しているが、データベースとしてはSS-MIX2標準化ストレージを使用していることから、他医療機関でも開発資源をほぼそのまま転用できる可能性がある。なお、治療の前後での血清カリウム値の変化が大きい、血液浄化療法を受けている患者等、単純に検査値だけでは不適切な処方かどうかが判断できないケースもあるため、人間による追加の確認が必要である。電解質異常の治療薬以外にも、血清クレアチニン値やeGFR等で判断できる腎機能低下時、またASTやALT等で判断できる肝機能低下時の禁忌薬剤について、本提案手法と同様の方法での検出が可能であり、拡張性のある手法と考える。