一般社団法人 日本医療情報学会

[2-H-1-07] 医療チームの脳梗塞急性期診療対応支援を行うためのシステムの開発と評価

*松本 省二1、中原 一郎1、安田 あゆ子2、沖田 慎平1、青木 満1、盛岡 潤1、橋本 哲也1、長谷部 朗子1、田邉 淳1、陶山 謙一郎1、渡邉 定克1、稲田 周平1、小山 裕司3、吉良 潤一4,5 (1. 藤田医科大学 脳卒中科, 2. 藤田医科大学 医療の質管理室, 3. 産業技術大学院大学 産業技術研究科, 4. 国際医療福祉大学トランスレーショナルニューロサイエンスセンター, 5. 福岡中央病院 脳神経センター 脳神経内科)

Acute stroke care, ICT, Team

【背景】脳梗塞は早く治療を受けるほど後遺症が軽減する可能性が高まる。脳卒中センターでは、診療の時短化のために、主に電話などを用いて、院内の医師、看護師、放射線技師、検査技師、検査技師等の医療チーム間で院内調整が行われている。我々は、このような院内調整をICTで支援し、脳卒中診療を効率化するためにTask Cale. Stroke(タスカル)というシステムを開発した。【目的】タスカルを脳卒中診療場面で使用することの効果を評価する。 【方法】タスカルは、患者到着予想時間や 主要タスクの進捗等の情報を院内どこからでも確認できる仕組みになっている。 2018年6月から2020年12月にかけて、日本国内の4箇所の脳卒中センターで再灌流療法(組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)投与もしくは機械的血栓回収術)を受けた患者を対象とし、タスカルの導入効果を検証した。期間を3期に分け、1)オリジナル期:介入前、2)トレーニング期:診療ワークフローの調査とそれに基づくタスカル使用法の指導(トレーニング期)、3)実際にタスカルを使用(タスカル期)、治療開始時間の変化および退院時の機能転帰(mRS)を評価した。【結果】316名の脳梗塞患者が再灌流療法を受けた(246名がtPA投与、162名が機械的血栓除去術)。来院からtPA投与時間は、オリジナル期の58.0分からトレーニング期の54.6分(P=0.049)、タスカル期の47.8分(P<0.001)へと有意に短縮した。来院から血栓回収術開始時間は、トレーニング期では変化しなかったが、タスカル期では、オリジナル期の93.8分から88.5分へと有意に短縮した(P=0.004)。退院時のmRSは、タスカル期で有意に低下した(P=0.003)。【結語】脳卒中診療をタスカルで支援することで、迅速な治療を実現し、後遺症の軽減に寄与していきたい。