一般社団法人 日本医療情報学会

[2-H-3-04] 病院内会議の議事録作成の効率化のためのAI文字起こしシステムの構築と効果

*永田 悟士1、平松 治彦1 (1. 国立循環器病研究センター)

operational efficiency, speech to text, AI, minutes in hospitals

【はじめに】
病院内の会議では、録音・文字起こしにより議事録を作成するケースが多くあり、文字起こしに相当の時間が費やされている。そのため、議事録作成のためのクラウドサービス利用可否について問い合わせが増えている。しかし、診療情報など機密情報の扱いにかかる情報セキュリティ上の制約から上記サービスの導入による効率化が行えていない。 そこで、オンプレミス・オフラインで動作する録音データからの文字起こしシステムを構築したのでその効果について報告する。

【方法】 GPUを搭載したLinuxワークステーションに、AIを活用した文字起こしソフトウェアであるOpenAI社のWhisperを導入し、ファイルサーバ上の共有フォルダをマウントするシステム構成とした。 自動処理は、Pythonにより1)共有フォルダをチェック、録音ファイルが有れば、2)Whisperで文字起こし、3)結果を同フォルダにテキストファイルとして出力、を一連に行えるスクリプトを作成し、2分毎にスケジュール実行することで実装した。

【結果】 主に事務部門の複数の会議体を対象に、半年間で48件、平均で1件59分の録音データを処理した。文字起こし時間は会議時間の約1/5で、十分理解できる単語や文章の結果が得られている。医学用語等で誤変換があったが、担当者が前後の文章から推測できるものであった。 これまでの議事録作成に比べ、書き起こしと録音を聞き直す必要がなくなり、仮に聞き直しが必要でも、文字起こしされた文章に発言時間が併記されるため、再生箇所を探す手間が省けるなど、全体として議事録作成に要する時間が大幅に減少した。

【おわりに】 構築した自動AI文字起こしサービスにより、議事録作成業務を大きく効率化できた。文字起こし結果から多くの会議で診療情報が含まれることを確認できたことから、オンプレミスでの構築により不用意な情報漏洩を抑制できたと考えている。