一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-3-04] MID-NETを用いた心不全の検索精度に関する検討

*井上 隆輔1 (1. 東北大学病院メディカルITセンター)

Phenotyping, MID-NET, heart failure

目的:医療情報データベースであるMID-NETを用いて、疫学研究の実施に適切な対象者の抽出が可能となるよう抽出条件を設定する。 方法:急性心不全または慢性心不全の急性増悪を対象とし、初期条件では2021/3/8~3/31に心不全に関連する病名(疑い含む)の開始日があり、BNPまたはNT-proBNPが高値の患者とした。入外は問わない。該当者は診療録を確認し、真のケース、疑わしいケース、その他のケースに判定し、陽性的中度(PPV)を算出した。本研究は本学医学系研究科倫理委員会により承認されている。 結果:初期条件により119例が抽出され、真のケース26例、疑わしいケース2例、その他のケース91例であった。PPVは21.9%、疑わしいケースを真のケースとしても23.5%であった。その他のケースでは、急性増悪を伴わない慢性心不全が50例と多く、BNP測定に伴い病名が付与された例も38例存在した。これらを除外すべく、「入院症例に限定する」、「利尿薬の注射剤またはHANPを使用している、または人工透析を実施している」、「疑い病名を対象外とする」、「心大血管の待機手術がある場合は対象外とする」という追加条件を作成した。これらの条件により、初期条件で抽出された119例中23例が対象となり、22例が真のケースで、PPV95.7%、感度84.6%、特異度98.9%、F値92.0%となることが見込まれた。偽陰性の症例は、満床のため他院へ紹介となった例、末期心不全で積極的な治療を行わなかった例、初期治療を前医で行った例であった。偽陽性の1例は、慢性心不全と急性腎不全を合併し、腎不全に対して治療を行った例であった。 結論:初期条件によるPPVは20%程度と低かった。その他のケースには安定した慢性心不全が多く、対象を入院症例に絞ること等により、それらの多くを除外し、PPVを改善することが可能性であった。