一般社団法人 日本医療情報学会

[2-J-5-02] ミリ波センサを用いたプライバシーに配慮した人物の行動検知技術

*吉岡 隆宏1、紺野 剛史1、白石 壮大1、井手 健太1、西川 彰則2 (1. 富士通株式会社, 2. 和歌山県立医科大学附属病院)

Millimeter wave sensor, Human pose estimation, Monitoring System

要介護認定率が高まる75歳以上の人口は増加傾向であり、2025年には2千万人を超えると見込まれている。一方で、介護職員数は不足する傾向にあり、2025年には32万人が不足するといわれている。このような高齢化社会において、介護施設や病院での人々の行動を見守る技術への需要が高まっている。
高齢者を見守る技術としてカメラを用いる手法もあるが、プライバシー保護が難しく、また暗所での認識率が低い。これらに対しミリ波センサを用いた見守りソリューションが提案されている。しかし、従来のソリューションは人物の大まかな位置変化などの把握に留まっており、どのような状態から転倒に至ったかなどの時間的な経緯までは分からなかった。
そこで本研究の目的は、ミリ波センサを用いて、プライバシーに配慮しながらカメラと同等の人物動作検出手法を提案し、転倒などの危険な状態を検知し迅速に医師や看護師、介護士などに通達するシステムを提供可能にすることである。
本研究では、ミリ波センサが受信した信号から生成された、人物の動作に基づく点群データを入力とし、人物の骨格を示す3次元座標17点を出力するAIモデルを構築した。歩く、座るなどの人の基本的な行動と、転倒などの危険行動で構成される約50パターンの行動を約140人分収集し、データ量の少ない点群データを拡張する手法により増強したデータを用いてAIモデルを訓練した。
深度カメラベースの骨格推定座標を正解値として、AIモデルで推定した骨格座標との誤差を評価したところ平均4.5cmであり、転倒など人物の姿勢を判定するのに十分な精度となった。また、それらの時系列の変化をルール化することで人が転倒した際などの危険な状況を検知し、アラートを発出するシステムを構築した。
これらの技術を用いて実際の病棟での実証実験を通して手法の有効性を高め、人々が安心して過ごすことのできる空間づくりを目指す。