[3-A-1-02] 電子カルテ改革から医療DXの社会実装へ~医療の原点から~
新型コロナウイルスパンデミックで顕在化した保健・医療・介護情報の共有システムの不備は、医療先進国と信じていた日本国民に大きな衝撃と不安を与え、周回遅れの医療DXを迅速に社会実装することが我が国の喫緊の課題となった。医療DXはIoT/AI等デジタルテクノロジーにより、医学医療領域に新たな価値創造と医療変革をもたらす。まさに国家事業であり、人間の安全保障の根幹でもある。 2001年以降、多くの電子カルテ関連のデジタル政策が施行されてきたが、20年後も電子カルテ普及率は約5割で、OECD報告では、その二次利活用等も遅れている。欧米では、すでに個人の健康医療に関する情報記録(PHR) や医療ビックデータの二次利活用の時代に突入している。 Medical Excellence Japanは、2021年、医療DXの起点として「電子カルテ改革」を政府に提出し、2022年、自由民主党「医療DX令和ビジョン2030」(全国医療情報プラットフォーム創設、電子カルテ情報の標準化・全医療機関へ普及、診療報酬改定DX )の政策立案に関わった。「骨太の方針 2022 」で、総理を本部長とする「医療DX推進本部」設置が記載された。2023年6月には、「医療DXの推進に関する工程表」が公表され、2017年から始まったレセプトデータ等を中心としたデータヘルス改革が加速されており、PHRと二次利活用が進むであろう。 21世紀はICTによる情報社会から、デジタル革新による人間中心のSociety5.0への大転換期にある。日本は、何故「デジタル化」、「電子カルテ改革」、そして「医療DX」が遅れたのか。デジタル革新はどこまで進み、どこまで課題を解決できるのか。医師は憲法上の生命権、幸福追求権および生存権を担うプロフェッションであり、医学医療界が、医療の原点から、医療DXの社会実装へ主体的な取り組みが求められる。