一般社団法人 日本医療情報学会

[3-C-1-01] 遺伝統計学による病態解明・個別化医療・ゲノム創薬

*岡田 随象1,2,3 (1. 東京大学大学院医学系研究科、2. 大阪大学大学院医学系研究科、3. 理化学研究所生命医科学研究センター)

Statistical Genetics, Genome-wide Association Analysis, Genome Personalized Medicine

遺伝統計学は、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から研究する学問分野である。ゲノム解析技術の著しい発達により、膨大なデータが得られる時代が到来した一方、容量のオミクスデータを横断的に解釈し、社会還元するための学問へのニーズが高まっている。遺伝統計学は多彩な学問分野におけるビッグデータの分野横断的な統合に適した学問であり、その重要性が認識されている。我々は、大規模ヒト疾患ゲノム解析により同定された数多くの疾患感受性遺伝子の情報を、多彩な生物学・医学データベースと統合することにより、新たな疾患病態の解明や、疾患バイオマーカーの同定、疾患疫学の謎の解明、ドラッグ・リポジショニングを通じた新規ゲノム創薬、ゲノム個別化医療の推進に貢献できることが明らかにしてきた。国際バイオバンク連携70万人を対象に実施したゲノムワイド関連解析を実施し、多彩なヒト疾患における感受性遺伝子領域を同定した。疾患感受性遺伝子情報に基づき直接的に創薬標的を探索するゲノム創薬手法や、ヒトゲノム全領域に分布する遺伝子変異に基づき個人のリスクを推定するpolygenic risk score(PRS)の活用が、新たな方向性として注目されている。ている。近年はゲノム以外の多層的なオミクス情報の活用の重要性も指摘されている。特に、シングルセル解析技術により一細胞レベルでの遺伝子動態が観測可能となり、軌道推定や細胞間相互作用、一細胞eQTL解析などのデータ解析技術が急速な発展を見せている。構築された多層的オミクス情報をバイオバンク由来の大規模ヒト疾患ゲノム情報とどのように紐づけて、ゲノム個別化医療を実践していくかが、今後の鍵と考えられる。本講演では、「遺伝統計学・夏の学校」など若手人材育成も含めた、私達の最近の取り組みをご紹介させて頂きたい。