Japan Association for Medical Informatics

[3-C-3-05] 調音運動を記録したリアルタイムMRI動画への歯列補填

*Hironori Takemoto1, Sakuya Tokiwa1, Kikuo Maekawa2 (1. Chiba Institute of Technology, 2. National Institute for Japanese Language and Linguistics)

Tooth superimposition, real-time MRI, articulatory movements

われわれはリアルタイムMRIを用いて22名の話者の正中矢状断面における調音運動を記録した動画のデータベース(rtMRIDB)を公開している。これらの動画では歯列と口腔が同じ輝度値で黒となって区別がつかないため,歯茎摩擦子音などの分析で問題となっていた。そこで,動画に歯列を補填する手法を開発し,精度を検討した。まず,話者ごとに1本の動画から上・下顎の歯列が舌や口唇などの軟組織で囲繞されて抽出可能なフレームを決定して歯列抽出フレームとした。そして,上・下顎の歯列をトレースして抽出し,それぞれ上・下顎歯列データとした。次に,歯列抽出フレームと歯列を補填する動画の第1フレームに上顎では鼻の先端,下顎では下顎骨下部を内包する矩形領域を設定した。そして,2つのフレームで対応する矩形領域を位置合わせする剛体変換行列を画像の強度に基づく勾配降下法で求めた。最後に,歯列データを剛体変換行列で写像することにより,第1フレームに歯列を補填した。そして,歯列抽出フレームの矩形領域の中心を補填する動画の第2フレームに剛体変換行列で写像し,この点を基準として第2フレームに矩形領域を設定した。この操作を繰り返すことにより,1本の動画に上下の歯列を補填した。この手法を用いて,現時点では22人中10人の話者の動画の計565本,289,304フレームに上・下顎の歯列補填を補填した。そして,その精度を補填した歯列が周囲の軟組織にはみ出す割合である誤差面積率で評価した。その結果,歯列抽出フレームで上・下顎の歯列を上下左右に1ピクセル平行移動あるいは±1度回転移動したときの最大の誤差面積率を基準とした場合,これを超過したフレームは上顎では2.6%,下顎では0.1%であった。よって,調音運動を記録したリアルタイムMRI動画に高い精度で歯列を補填することに成功したといえる。