[3-D-1] 医療における無線通信の現状とこれから
今や、医療機関や老人健康施設、さらには在宅医療においてもICT化が進み、 特に無線通信はその基盤として確実に導入が進んでいる。しかし、運用におけるトラブルは後を絶たない。業務用無線通信にトラブルが生じると、患者のバイタルサインの異常検知が遅れる、ベッドサイドからサーバへのアクセス(患者情報の参照及び入力)ができないなど、患者安全と労働効率に対する脅威となりえる。また、2023年3月に公衆PHS網のサービスが終了した。ナースコールなどで用いられている構内PHS(自営PHS網)は今後も利用可能であるが、いずれ置き換えは避けられない。 また、近年報道されているように、患者向け無線LANの整備要求が高まっていると共に、不正侵入などセキュリティに関する事案も多くみられる。 電波環境協議会(Electro-Magnetic Compatibility Conference、EMCC)は総務省と協力し、令和3年7月に「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」(以下、「手引き」)の改定版を発行した。この手引きは、特に医用テレメータ、無線LAN、携帯電話を中心として、安全な導入と運用のための情報と、病院側に求められる管理体制についてまとめている。また、改定版では無線LANについてはテザリングの取り扱い、携帯電話関連では5Gへの対応、院内PHSの今後の方向性などが追加されている。 本セッションでは、改定された新しい手引きの内容を紹介し普及を図るべく、総務省近畿総合通信局と共同でシンポジウムを開催するものである。新しい手引きの内容紹介と共に、現場からの要望及び事例紹介を予定する。本シンポジウムを通して、無線通信にかかる問題点と安心・安全な運用方法とその事例が周知され、患者安全と作業効率の向上が図られることを望むと共に、今後起こり得る問題についても議論する。