一般社団法人 日本医療情報学会

[3-D-4] 産官学が進める医療材料の識別と標準コードの活用

*美代 賢吾1,2、植村 康一3、大畑 卓也4、大橋 太5、近藤 昌夫6、弓場 充7 (1. 国立国際医療研究センター、2. 東京大学大学院医学系研究科 医療AI・デジタルツイン開発学講座、3. GS1 Japan、4. (一社)日本医療機器産業連合会UDI委員会、5. シップヘルスケアホールディングス(株)、6. 大阪大学大学院 薬学研究科、7. (独法)医薬品医療機器総合機構)

Medical Device Traceability, GS1, Hospital Logistics, Regulatory Science, Barcode

医薬品や医療材料は患者に直接使用されるため、その識別と記録は医療の安全をはかるうえで最も重要なことの一つである。そのため、2019年の薬機法改正では、これら医療製品のトレーサビリティの向上のためバーコード表示が義務化された。さらに常に最新の情報を得るために添付文書の電子化が行われ、この電子化された情報へのアクセスとしてもバーコードが利用されるようになった。このバーコードには国際標準であるGS1バーコードが、識別コードにはGTIN(Global Trade Item Number)が利用されるなど、標準コードの利用やデジタル化が進んでいるようにも思われる。しかし、本当にデジタル化あるいはその先のデジタルトランスフォーメーションにつながるような利用が考えられているのであろうか。 医療材料へのGS1バーコードの表示は20年以上前から業界主導で始まったが、当初から目指された医療現場での安全性向上のための利用は遅々として進まず、その間欧米で進められてきたUDI規制に後塵を拝する形となった。同様に各国で進められているような製品情報のナショナルデータベースは本邦ではなかなか前向きな議論が行われず、添付文書電子化とトレーサビリティという全く同じ国際標準を利用する施策が、データ登録や利用面では別々に議論が行われている。 日本の医療のデジタル化が十分に進んでいない原因として、多くの施策においてグランドデザインが欠如していることもよく指摘されることである。すでに国際標準でコード化され、バーコードまで表示されるようになった医療製品のデータ活用について議論し、問題点を洗い出すことは、様々な分野での医療DXを進める指標としても極めて重要である。本セッションでは、標準コードの利用に関して、医療材料の製造、利用、規制の立場から、課題と展望について議論したい。