Japan Association for Medical Informatics

[3-F-4-04] 携帯電話関連技術を用いた感染症対策におけるデータ利活用の法的課題

*Shunsuke Mizobata1 (1. TMI Associates)

感染症対策を有効に行うためには、関係機関におけるデータ連携をはじめとした、データの利活用が不可欠である。他方で、データの利活用に際しては、個人情報保護法、プライバシー権、あるいは携帯電話関連技術を利用する場合には通信の秘密など、法律上の課題が存在することは法律関係者以外にも広く知られているといってよいだろう。
このような法律上の課題を等閑視して感染症対策を議論することはもちろん現実的ではない。他方で、これらの法律上の論点は、必ずしも感染症対策を見据えて議論されてきたわけではないために、特に公衆衛生上の必要性が高い状況下において、どこまでのデータ利活用が許容されるのかということは必ずしも明確ではない。さらに、プライバシーという言葉が人口に膾炙して久しいこともあり、法的には可能であるにもかかわらず、データ利活用一般への反発が見られることもある。また、通信の秘密は、法律上は簡潔な規定しかなされていないために、条文からは通信の秘密として保護される範囲は不透明である。これらの結果、法律上の制限以上にデータ利活用が控えられてしまい、感染症対策が十分に行えない場面も存在したように思われる。たとえば、個人情報保護法における例外規定の適用について制限的に解釈した運用がなされたり、通信の秘密として保護される情報の範囲について拡大的に解釈した運用がなされたりしたことが、データの利活用を自粛する一因となっていたように思われる。
ここでは、公衆衛生が問題になる状況下を念頭に置き、かかる状況に関する現行のデータ法制の整理を行う。このことにより、携帯電話関連技術を用いた感染症対策のあり方について、自粛から解放された議論が行われるための一助となることを願いたい。