Japan Association for Medical Informatics

[3-G-1-01] 診療情報データベースを活用した ロボット支援下根治的膀胱摘除術の費用最小化分析

*Shiori Iwai1, Takahiro Osawa2, Yasuhiro Morii3,4, Katsuhiko Ogasawara4 (1. 北海道大学大学院保健科学院, 2. 北海道大学医学研究院腎泌尿器外科, 3. 国立保健医療科学院保健医療経済評価研究センター, 4. 北海道大学大学院保健科学研究院)

Cost Analysis, Robot Surgeries, Cystectomy, Propensity Score

【背景・目的】膀胱全摘除術では、従来の治療法である開放型根治的膀胱全摘術(ORC)に対して、ロボット支援下腹腔鏡下膀胱全摘術(RARC)が2018年から保険収載され普及が進んでいる。RARCは診療報酬点数が高いが、術後合併症や出血量が少なく入院期間も短いという報告がある。海外では両術式の費用を比較した報告はあるが、特に入院期間は医療制度などの違いから日本と海外で差異がある可能性が報告されているため日本の実態に即した分析が求められる。そこで本研究では、日本において費用対効果の観点から効率的な膀胱全摘除術の治療提供を検討する一助になることを目的として、ORCに対するRARCの費用対効果を検討した。【方法】対象は筋層浸潤性、またはハイリスクな筋層非浸潤性膀胱がん患者とし、分析視点は公的医療の立場とした。臨床試験における主要アウトカムである全生存期間等には差が示されていないため分析方法は費用最小化分析とし、術後90日間の費用(手術関連、入院、合併症治療、輸血費用の合計)を積み上げにより推計した。合併症発症率等の確率パラメータは文献レビューとメタアナリシス等により、費用は二次データから推計した。入院期間は電子カルテ由来の診療情報データベース(the RWD database)に含まれる2018年以降に膀胱全摘除術を受けた患者を対象に、年齢・性別・電子カルテ上の病名から疑似的に算出したチャールソン併存疾患指数(疑似CCI)を共変量として傾向スコアマッチングを行い、入院期間を比較した。【結果・考察】診療情報データベースのORC110例、RARC98例からマッチングされた各群82例における入院期間は、RARCで約10日短かった。ORC、RARCの費用はそれぞれ2,497,801円、2,441,530円であった。今後はより大規模でエビデンスレベルの高いデータベースを用いた分析が望まれる。