一般社団法人 日本医療情報学会

[3-G-1-03] 経時的な薬価と処置料改定に対応したマスター作成

*福山 啓太1、森 由希子1、植嶋 大晃2、黒田 知宏1 (1. 京都大学医学部附属病院医療情報企画部, 2. 京都大学国際高等教育院)

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背景:
医療費の研究において、薬剤や処置などの価格は経時的に改定されている。我が国の医療費全体におけるこれらの負担を検証する際には、経時的改定を反映する必要があるが、既存のマスターは特定の時点の価格を掲載しており、これまで価格変動を考慮した解析が困難であった。本研究では、経時的な薬価と処置料に対応したマスターデータを作成する新たな手法を提案する。
方法:
本研究では、社会保険診療報酬支払基金ホームページ上で公開されているマスターデータを二次利用した。支払基金ホームページ上に掲載された全マスターファイルを再帰的にダウンロードし、それらを統合・処理することで、当該コードと日付から薬価、処置料を提示するキーと値のペア(key-value)形式の構造に変換した。これらのデータをjson形式で出力し、各種解析プラットフォームで容易に利用できるようにした。 処理はWSL及び標準的なPython解析環境で実行可能であり、処理内容のコードと出力されたマスターデータは、GitHubで公開する予定である。
結果:
本研究により、薬価と処置料の推移を利用することが可能になった。調査期間(2012~2023)中、最も点数の上昇した処置として生体肝移植術(129560点から227140点)、最も薬価の低下した薬剤としてキムリア点滴静注(33493407.0円から32647761.0円)などを抽出、評価することが可能となった。
結論:
本研究により、NDB(National Database)等を利用した医療費の研究、政策立案において、より現実的な負担評価が可能となった。今後の研究では、このマスターデータを活用して、日本の実地診療における薬剤や処置の経済的影響を検証する予定である。