一般社団法人 日本医療情報学会

[3-H-1-01] ヒヤリ・ハット報告書に基づくオントロジ推論を用いた人的介護事故リスク推論システムの構築と検証

*古市 卓巳1、安井 大希1、撫中 達司1、青木 三重子2、豊川 絢也2、溝呂木 信之2 (1. 東海大学 情報通信学研究科, 2. 三菱電機ITソリューションズ株式会社)

outomatic ontology construction, bottom-up ontology, elder care accident, GPT-4, near-miss report

介護福祉分野は人的リソースがひっ迫しており,人材レベルやサービスの質のばらつきなど,現場課題が指摘されている.著者らの取組みでは,本課題に基づいて利用者にSHELLモデル毎の介護事故リスク分析及び対策案の提示による改善への気づきを与え,介護人材の技量差の緩和を目的とするシステムの構築を試みている. 本研究ではヒヤリ・ハットデータの中で最大の原因であるヒューマンエラーに着目し,Livewareに相当する人的介護事故のリスク推論を試みる.介護施設で蓄積されたヒヤリ・ハットデータと,介護現場で高齢者の自立度評価に用いられるBarthel Indexや介護者の業務評価シートに基づきオントロジを構築し,介護事故リスクの推論を行う. 介護施設では事象の原因と対策を記載したヒヤリ・ハット報告書が記録されている.本研究では人的介護事故リスク推論のため,ヒューマンエラーに関するヒヤリ・ハットデータを対象に,SHELL分析に基づき記載された原因ファクターのLiveware項目に注目し,対人評価指標であるBarthel Indexと介護業務評価シートに基づいて構築したオントロジと紐づける手法を提案する. ヒューマンエラーを対象としたヒヤリ・ハットデータに対しBarthel Indexと介護業務評価シートを用いる理由は,これら指標が包括する事象の同質性にある.これらの指標は同質の介護事象に対して,入居者と介護者,異なる視点から評価を行うものである.ヒューマンエラーによる介護事故リスクは単一のファクターではなく,入居者と介護者それぞれによってもたらされる複合的ファクターの帰結と考えられる.本稿では先述の手法を基に人的介護事故リスクに対してリスク種と発生可能性を推論するシステムの構築と,DL推論によりヒヤリ・ハットデータの再現性を検証し,システム評価の結果を報告する.