一般社団法人 日本医療情報学会

[3-I-3-05] 多視点からのX線透視像を用いた血管構造の深度画像の作成

*釣 耕平1、寺下 貴美1、川村 拓1 (1. 群馬県立県民健康科学大学診療放射線学部)

Stereovision, Depth map, Angiography

目的:血管造影検査は、血管に先行させたガイドワイヤに沿ってカテーテルを進め、撮影を行う。血管の分岐や走行は患者によって異なるため、術者による透視下でのガイドワイヤの操作は高度な経験を要する。経験が浅い術者では、検査時間が延長してしまう場合がある。もし、血管の3次元構造が把握できれば、術者はガイドワイヤの操作をスムーズに行うことが可能となる。事前に3D-CTAを撮影するなどの方法はあるが、造影剤量や被ばく量の増加の問題がある。2次元画像から3次元情報を復元する方法にステレオビジョンがある。これは視点の異なる画像に写る同位置の特徴点から、深度を計算する方法である。そこで本研究では、多視点のX線透視像から、血管構造を反映した深度画像を作成する手法を提案する。 方法:多視点のX線画像の取得には、入射方向の異なる画像を一度に取得できるという点とX線管焦点の空間座標が既知であるという点からトモシンセシス撮影を用いた。被写体は頭部血管ファントムを用い、撮影装置に腹臥位で配置し、撮影した。まず、キー画像からパッチ画像を取り出した。次に、異なる視点の画像から、パッチ画像と一致度の高い箇所を選択した。一致度には正規化相互相関係数を用いた。これらの位置のずれから深度を計算した。この操作をX,Y,Z方向で3次元空間を埋めるように行い、深度画像を作成した。プログラミング言語はpythonを用いた。 結果:深度画像の結果より、内頚動脈は約12cmの高さに描画され、前大脳動脈と中大脳動脈の分岐部では約8cmの高さに描画された。さらに前大脳動脈の前交通動脈付近では約4cmに描画され、末梢に行くに従い約6cmの高さに描画された。従って、多視点からのX線画像を用いて血管の3次元構造を反映した深度画像を推定することが可能であった。この深度画像を提示することで、血管造影検査の手技を支援できると考えられる。