[3-I-3-06] ミリ波センサを用いた時間的経緯を含む行動検知技術
Millimeter wave sensor, Human pose estimation, Monitoring System
高齢者は若年者に比べて転倒リスクが高く、また転倒によって重大な障がいが生じた事例が報告されている。独居高齢者や高齢入院患者において、安全な見守りや転倒などの危険状態を検知する技術の需要が高まっている。 見守りにカメラを用いる手法があるが、プライバシー保護が難しいだけでなく、暗所で転倒が検知できない。そこでミリ波センサを用いた見守りソリューションが提案されている。ミリ波センサは映像を取得せず電波情報のみで見守りが可能である。しかし、従来のソリューションは人物の大まかな位置変化などの把握に留まっており、転倒に至る時間的な経緯までは分からないため、対策や改善に繋げることができない。そこで本研究では、ミリ波センサを用いてプライバシーに配慮しながら時間的な経緯を含む転倒検知技術を提案する。 ミリ波センサが受信した信号から生成された、人物の動作に基づく点群データを入力とし、人物の3次元骨格座標を出力するAIモデルを構築した。歩く、座るなどの人の基本的な行動と、転倒などの危険行動で構成される約50パターンの行動を約140人分収集し、データ量の少ない点群データを拡張する手法により増強したデータを用いてAIモデルを訓練した。そして、骨格推定座標をもとに移動方向、速度、関節角度などの特徴量を算出し、転倒や転倒前の行動を判定するルールを設定した。 和歌山県立医科大学附属病院内で転倒事例が多い病棟の個室病室4部屋にミリ波センサを各1台ずつ設置し20日間データを収集した。データ収集期間中に転倒事例が生じた。データ解析の結果、骨格推定座標と行動判定ルールから転倒および転倒前の行動を検出することに成功し、実現場における本技術の有効性が示唆された。 今後、さらなる実証実験をおこない本技術の有効性を高めることで、人々が安心して過ごすことのできる空間づくりを目指す。