一般社団法人 日本医療情報学会

[3-J-6-02] 患者基本情報を用いた認証連携による迅速な患者情報収集システムの設計

*大前 裕輝1、山本 豪志朗1,2,3、油谷 曉3、黒田 知宏1,2,3 (1. 京都大学大学院情報学研究科, 2. 京都大学医学部附属病院, 3. 京都大学大学院医学研究科)

Emergency Medicine, Patient Data Collection, Federated Authentication

救急医療の現場では,意識不明患者の氏名及び既往歴等の把握に多くの労力を要している。特に,患者が単独で搬送された場合は,財布などの所持品から身元を特定することから始まる。仮に診察券等,他の医療機関への繋がりが見つかったとしても,電話やFAXといった従来型の情報伝達手法で対応することになり時間を要することが多い。また,家族が同伴していたとしても当該患者の病歴を正確に覚えていることは稀である。このように,意識不明患者の情報収集には非効率な手段に頼るしかないのが実情である。一方,電子健康記録(EHR)や個人健康記録(PHR)の普及に伴い,既往歴,処方箋,特定健診結果,予防接種の情報など,患者情報を取り扱うシステムは増えつつある。しかし,それらのシステムでは患者が自ら情報を提示することが前提となっており,患者が意識不明の場合は活用できない。また,各システムは複数の事業者に分散しており,統一的な仕組みでアクセスすることは困難である。そこで本研究では,救急医療に従事する医療者が分散する患者情報に迅速にアクセスすることを可能とする患者情報収集システムの開発を目指す。具体的には,認証連携(フェデレーション)の枠組みに,医療者にとって第三者となる患者情報を取り扱える仕組みとして「患者基本情報提供層」を設計して組み込むアーキテクチャを考案することにより,認証連携の利点を損なわずに患者の身元特定と医療情報収集を実現できると考える。すなわち,医療者は所属機関のシステム等で自身を認証後,患者の所有物(クレジットカード等)の固有番号を入力することで,患者の既往歴等の情報を閲覧できるようになり,円滑な患者情報の閲覧,および,迅速な情報収集につながることが期待できる。本発表では,システム構成の概要と実際の救急医療現場での実運用の可能性について述べる。