一般社団法人 日本医療情報学会

[4-A-3] 電子カルテをベースとする臨床研究基盤の構築を目指して

*松村 泰志1 (1. 国立病院機構 大阪医療センター)

electronic medical record, clinical research, data warehouse, structured data entry, natural language processing

ㅤ私は1992年から阪大病院における病院情報システム導入に関わり、電子カルテを導入するに際し、臨床研究基盤を作ることを意識してきたので、そこにフォーカスしてこれまでの活動を紹介する。
 業務用データベースが研究目的の検索に利用しにくいことから1995年よりデータウェアハウス(DWH)を構築した。一般記述を構造化データとして収集するためにダイナミックテンプレートを開発し、2000年に導入した電子カルテに組み込んだ。ペーパーレス化するために、医療文書をPDF等で一元管理するDACSを開発し2010年に組み入れた。PDFのヘッダ情報に加え重要な臨床データを所定のXMLに記録し収集することで文書内のデータをDWHに収集した。2017年より画像検査レポート等のフリーテキストデータを自然言語処理により構造化データに変換する方法を研究開発している。
 関連病院と共同で臨床研究を進めるための基盤を構築した。各病院の電子カルテと阪大データセンターをセキュアなネットワークで結び、2012年より各施設で共通の入力テンプレートで入力したデータを電子症例報告書のODMにマッピングしてデータを収集するシステムを開発導入した。2019年より同じプログラムで多施設のデータ検索を可能にするために、共通構造・共通コード体系のDWHを開発し、6病院に導入した。
 2018年より三井住友銀行とPHR事業を開始した。アレルギー/禁忌、臨床検査結果、処方に加え、患者の医療課題に応じた特定のデータを患者に返している。この目的のために、スケジュールに従って入力すべきテンプレートが提案され、入力を誘導する機能を開発し現在評価中である。これにより、患者のある診療課題に関わる医療機関と患者自身が連携して一連の記録が作成され、臨床のみならず、収集データは臨床研究にも活用でき、真のアウトカムによる評価が可能となると期待している。