[4-B-3-03] アカデミアや企業による臨中ネット活用の可能性
診療記録や個人健康記録などのリアルワールドデータ(RWD)から創出されるリアルワールドエビデンス(RWE)の利活用が近年急速に進みつつある。ランダム化比較試験(RCT)からは除外される集団における医薬品等の効果検証や、承認後の医薬品等における有害事象の検出といった、定型的な臨床試験と相補的な役割が期待される。そのためには品質が担保され標準化されたデータが迅速に収集でき、それらが広く活用できるプラットフォームづくりが不可欠である。 2018年に始まった臨中ネットは、臨床研究中核病院における病院診療情報システムより得られるRWDを集積して RWEを創出することを目的としている。研究課題に応じて、各機関から同じ品質・共通の方法でデータを研究者に提供できるような研究基盤の構築およびデータ提供のための仕組みの構築を目指している。本講演においては臨中ネットのデータ基盤を活用した具体的な研究課題の一例である「降圧薬と腎」のプロジェクトの中で実施したことを概説し、今後幅広くアカデミアや企業の研究者が臨床研究を実施する参考としたい。まず、必要なデータ項目を時間軸に則って整理するデザインダイアグラムとその解説を記したデータ抽出計画書を研究プロトコルとは別に作成して各機関の担当者に配布した。次に、各機関において出力されたデータを集約し、その中から必要な薬剤を分類するため、降圧薬や糖尿病治療薬などに関する独自の薬剤マスタを作成した。最後に、標準化されていないデータではあるものの、研究遂行に極めて重要であった、「腎代替療法の実施状況」に関する情報を収集し、分類に取り組んだ。臨中ネット標準データの枠組みで実施する研究と合わせて、今後データベース研究として利用可能な項目を追加するための取組みとして重要な示唆を与えた。