一般社団法人 日本医療情報学会

[4-B-3-04] Real World Dataを利用する臨床研究を支援する人材像とその育成

*宮原 冬佳1、向井 まさみ2、高田 敦史1、田中 勝弥2、吉本 世一2、山下 貴範1、中島 直樹1 (1. 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター、2. 国立がん研究センター中央病院 医療情報部)

医療分野においてReal World Data(RWD)の利活用を推進する人材育成については多様なプログラムが提供されている。一方、RWDの利活用を学んだ研究者が画期的な研究計画を立案しても、その基となる医療データ(RWD)自体の品質に課題がある場合や、研究に必要なデータと用いるRWDの実態が異なる場合には、期待する成果を出すことが難しく、誤った結果を公開するリスクさえある。このようなRWDの生成、抽出、加工、提供のプロセスに専門的に携わり研究を支援する人材の育成もまた、Real World Evidence(RWE)の創出のためには喫緊の課題である。
2018年に始動した臨中ネット事業は、RWEの創出を目的としたデータ駆動型研究基盤を臨床研究中核病院に構築するものである。SWG2A(人材育成)では検討を重ね、このプロセスに携わる人材をIT化人材・標準化人材・品質管理人材(3人材)と定義し、人材育成プログラムを構築した。具体的には、臨中ネットに携わる者を対象に、2021年度にはRWDを利用した臨床研究に携わるための土台となる知識を理解できるレベルを目的とした基礎編セミナー(全10回)を開催し、2022年度には臨中ネットのユースケース等で発生した課題と解決手法を共有し業務プロセスで活用できるレベルを目指す実践編セミナー(全10回)を開催した。これらの内容は、国内の医療機関を対象に2023年10月より一般公開する。
既に、二次利用データベースを構築し利活用者へ提供する先進的な事例はあるが、多施設の共有等の面においてはまだ多くの課題がある。SWG2Aでは、医療現場で診療業務を担う者のこの領域のスキルの底上げを図り、状況に即した継続的な人材育成を推進する必要があると考えており、臨中ネットで培った医療情報基盤を整えるための手法(標準化・品質管理・データ出力等)等の公開についても検討している。