一般社団法人 日本医療情報学会

[4-B-3] 薬事活用も視野に入れたRWD/RWEへの期待~臨中ネットの取組みを踏まえて~

*松木 絵里1、飯村 康夫2、近藤 充弘3、今泉 貴広4、宮原 冬佳5、藤林 和俊6、前田 英一7、中島 直樹5 (1. 慶應義塾大学医学部、2. 厚生労働省 医政局 研究開発政策課、3. 日本製薬工業協会、4. 名古屋大学医学部附属病院、5. 九州大学病院、6. 順天堂大学、7. 神戸大学医学部附属病院)

Real World Data, Real World Evidence, Regulatory Decision Making

健診データや電子カルテデータ、レセプトデータ等、健康医療領域に蓄積したReal Word Data(RWD)を用いてエビデンス(Real World Evidence; RWE)を生み出す動きは世界的に増加傾向にある。2023年5月にパブリックコメントの募集が開始されたICH GCP E6(R3)の公開とともに発表されたE6(R3) Annex2 Concept Paperにおいて、RWDの薬事承認に向けた利用についての記載がなされていることに示されるように、ランダム化比較対照試験(RCT)を原則としてきた薬事承認申請でも近年、1)RCTの経済的・時間的コストによる製薬企業や研究者の疲弊、2)RCTの実験的環境が社会の実環境と解離、などの理由によりRWEへの期待が高まっている。本邦の規制当局も、2021年以降通知や事務連絡を通して、薬事承認申請へのRWD/RWE活用の論点整理を進めている。
 2023年5月現在、15病院となった臨床研究中核病院において、2018年度から構築が始まった医療技術実用化総合促進事業内、RWE創出のための取り組み:通称「臨中ネット」では、臨床研究中核病院内にとどまらず、日本全国のアカデミアや企業などによる研究目的での活用を想定したRWDの整備をこれまで進めてきた。一方で、上述のような薬事規制へのRWD活用の機運が高まる中、将来の薬事活用までを想定したデータ出力・品質管理を念頭に置いたデータ整備を進める必要性を認識し、そのような体制整備を開始している。
 本ワークショップでは、厚生労働省や製薬企業からRWEへの期待や将来構想を述べていただいた後に、臨中ネットの取り組みの中から、社会における臨中ネット活用や貢献の可能性と、このようなRWE創出事業に必要な人材育成についての活動を紹介し、臨中ネットのみならず日本におけるRWE活用のための議論を深めたい。