一般社団法人 日本医療情報学会

[4-C-1-01] NDBオープンデータとGIS(JSTAT MAP)を用いた地域の医療需要の市場規模予測

*宮原 勅治1 (1. 岡山県備北保健所)

日本は人口減少のフェーズに入り、これからの医療経営はその地域の将来人口の変化に伴う医療需要予測を行い、市場規模の変化を読み込んだデータに基づいて経営戦略を立て、適切な投資を行うことが肝要となる。同じ都道府県内にあっても、地域により、性年齢別人口の変化のパターンは大きく異なり、そのため、地域によって各種診療行為の発生回数の推計パターンも異なっている。
 NDBオープンデータと国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を用いて2020年から2045年までの各地域の医療需要(各種診療行為の発生回数)の変化の可視化を行った。さらに、個々の診療行為に、それぞれの診療報酬点数を掛けることにより、医療需要の市場規模を推計し、可視化した。
 地域の人口は、GIS(JSTAT MAP)を用いることに依り、市町村の行政単位だけではなく、特定の病院から任意の距離(たとえば、時速40Kmで15分)の範囲内に居住する性年齢別人口を正確に集計することができる。こうした機能を、先のNDBオープンデータや将来推計人口と組み合わせることにより、その病院から任意の範囲の住民から発生する診療行為回数(医療需要)やその市場規模を推計することができる。
 こうしたデータを基に、その地域に発生するであろう変化を、あらかじめ医療需要の市場規模の変化として推計することに依って、これまでのような経験と勘に頼った経営戦略や、根拠に欠ける投資を避け、データに基づいた将来に向けた診療体制の構築や投資判断など、具体的な経営戦略の構築が可能になる。 ただし、この方法は将来の診療報酬点数が不変であることを前提にした市場規模推計ではあるが、実践的な経営戦略を立てる上では十分有用と考える。