一般社団法人 日本医療情報学会

[4-C-3-01] デジタルセラピューティクス、その期待と課題について

*阪口 岳1,2 (1. 塩野義製薬㈱、2. 日本デジタルヘルス・アライアンス)

疾病に対して介入し患者のQOLを改善することが治療であり、医薬品による薬剤療法や医師による手術、医療従事者によるリハビリテーションなどが代表的である。近年、所謂ICT(Information and Communication Technology)の飛躍的な技術革新に支えられた新たな治療方法として、デジタルセラピューティックス(DTx)が誕生した。DTxは医療従事者と患者をデジタル技術で「繋ぐ」ことにより両者の空白を埋めることや、生体機能を直接賦活するなど、これまでの治療には無い新たな価値を提供し得るものとして注目を集めている。2010年に世界初となるDTxが米国で発売されて以降、欧米を中心に開発が先行し50を超える製品が上市されているが、DTxの処方件数は従来の治療方法に比して極めて限定的であり、ビジネスとしても大きな成功例には至っていない。本邦においては2020年に初めてDTx製品が承認され保険収載され、これまでに2製品が上市されているが、未だ黎明期と思われる。
 本講演では、海外において開発された特筆すべき DTx 製品の例を紹介するとともに、最近のDTxの開発状況と市場分析から読み取れる課題について考察したい。次に、我が国の DTx の開発状況へ話題を移し、開発状況の遅延と、その背景にある現行の規制制度における課題感に関して述べる。その中で、製薬企業の果たせる役割と共に塩野義製薬の取り組みに関しても合わせて紹介したい。
 最近になって、日本の DTx 開発企業数社が中心となり、業界統一組織 日本デジタルヘルス・アライアンス(JaDHA)を設立し、DTxビジネスの課題解決のための業界団体として活動を開始した。JaDHAは関連団体、規制当局、その他医療関係者の対話を通じて、この難問に取り組んでおり、これら難問が解決され、DTxの価値が早期に臨床現場に届く環境が整備されることを期待している。