[4-D-1-03] ePath基盤データを活用した看護実践の評価と業務改善
看護記録の一目的は、看護実践の評価及び質の向上を図ることにある。この目的を果たすためには、看護記録が分析できるデータ構造をもつシステムが不可欠である。クリニカルパス標準データモデルの開発および利活用(以下、ePath)プロジェクトは、そのシステムを実現している。具体的には、クリニカルパスの考え方や仕組みを活用して、電子カルテシステムベンダー間で、相互運用性のある標準クリニカルパス(以下、標準パス)と、複数施設から収集されるデータを解析できるシステムが構築されている。標準パスは、プロジェクトに参加した4施設で「ひな形パス」として作成された。各施設では、それぞれ必要な項目を「ひな形パス」に追加し運用できる。ePathでは追加された治療やケア項目も含めデータが蓄積されるため、同一パスにおける抗生剤投与の相違など、施設間での治療の相違を把握することができる。抗生剤投与有無や内服か注射かなど投与方法の違いは看護師の業務量に大きく影響するため、施設間のデータ比較は治療の標準化を推進し、看護師の業務改善に寄与すると考える。また、ePath基盤上のHファイルとパスデータを用いた重症度、医療・看護必要度の施設間比較では、施設間での評価に違いがあることがわかっている。2019年7月2日から2021年3月30日に胸腔鏡視下肺切除術パスを適応した患者のテータを使って、「経過日数別患者数・評価値平均」のグラフを作成し、施設間での違いを確認したところ、術当日と術後一日目の「寝返り」、「移乗」、「衣類の着脱」の評価値に差があった。この差に影響する要因には、術後の管理場所や安静度の指示などの違いが推察され、同一パスであっても、提供されるケアに差が生じている可能性があると考えられた。 このように、ePathは、看護実践の評価と業務改善を可能にし、看護の質向上に寄与することが期待される。