[4-E-1-04] NDBサンプリングデータセットの使用経験と課題
NDB sampling data, Stroke, hospitalization, risk factor
【目的】NDBサンプリングデータセット(以下、サンプリングデータという)を使用した研究内容と分析時の技術的課題・成果を共有する。 【方法】平成25~27年のサンプリングデータを用い,急性期脳梗塞治療の1つであるrt-PA投与患者を対象として入院期間に関連する因子の検討を行った。脳卒中ガイドラインにおける推奨項目及び入院中の薬剤をもとに平均入院期間以上の退院遅延群および未満の早期退院群に分けて分析を行ったところ、退院遅延群に関連する因子として,入院時 JCS 2 桁,経腸栄養の実施,感染症および下剤/浣腸剤の処方が確認された。入院後に介入可能性のある感染症では,有無により3.8日間の入院期間延長が推定された。サンプリングデータは匿名性を確保するためにデータの希釈と分断がされていることから、入院期間はLittleʼs Lawを使用し計算した。 【結果】倫理審査をなしに探索的な分析が可能であり、診療フローに対する知識と診療報酬算定に関する知識があれば気軽に分析を実施することができた。また得られた結果は、サンプリングデータの希釈率を逆算することで保険医療全体での発生件数を推計することが可能であった。薬剤データの分析では日本標準商品分類番号の中分類を利用したが、探索的な分析をする場合にはちょうど良いと感じた。限界としては、脳卒中ガイドラインの項目のうちレセプト上表現されていないものは分析が困難であった。入院期間の判定が可能であったのはrt-PAの使用が確認できた標本集団の47%に限られた。 【考察】サンプリングデータを利用した研究は探索的な分析が可能であり、研究立案時に想定していた分析手法で期待する結果が得られなかった場合や、多変量解析における多重共線性の排除といった分析手法上の制限にも弾力的に対応でき、分析を遂行することが可能であった。