一般社団法人 日本医療情報学会

[4-E-1-05] 疾患定義の実際 ~少しの違いが大きな違いになるクレームデータベースの落とし穴~

*野田 龍也1、明神 大也1、西岡 祐一1、今村 知明1 (1. 奈良県立医科大学公衆衛生学講座)

Claims Database, NDB, Disease Definition, Sensitivity Analysis

クレームデータベース (claims database) は行政データ (administrative database) とも呼ばれ、対象患者または医療機関における医療専門職の診断、医療行為に基づく請求書がデータベース化されたものである。日本における最大のクレームデータベースはレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)であり、近年、利用が広まっている。 クレームデータベースでは検査値や疾患の重症度、患者背景の一部または全部の情報が欠落していることがあり、特に傷病名の情報に課題があるのではないかとの根強い指摘がある。仮に「アレルギー性鼻炎」との記載があっても、本当にその病気であるかの確度にバラツキがあるとの批判である。 一定の条件を組み合わせることにより、その傷病の患者を、データベース上でより正確に把握しようとする試みは、疾患定義と呼ばれている。国際的には、単純に傷病名(ICD-10など)だけで疾患定義を済ませる研究も多く見られるが、私たちの研究では、疾患定義の条件のちょっとした違いで、算出される患者数等が大きく異なることが明らかとなっており、クレームデータベースにおいて、正確な疾患定義の構築は最重要項目のひとつと考えられる。 本発表では、NDBで行ったいくつかの傷病(梅毒、潰瘍性大腸炎等)の疾患定義とその結果を実際に提示し、わずかな条件の違いが大きな違いをもたらすことや、疾患定義の構築において発表者らが注意している点を示す。